本記事では、アドビ社のタグマネージャーである「Adobe Experience Platform Launch」(以下Launch)について紹介します。
※2022年5月18日更新
※2022年、Launchはリブランディングされ「Data Collection」に名称が変わりました。
※Dynamic Tag Management(DTM) は、2021年4月にアドビ社によるサポートが終了いたしました。
タグマネージャーについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
Launchとは
Launchとはアドビ社が提供する新しいタグマネージャーです。
「マーケティングテクノロジーのエコシステムをサポートし統合できる次世代のタグ管理システム」として開発されました。
Launchは、従来のタグマネージャーでサポートされていた単純なタグ管理にとどまらず、近年複雑化してきているマーケティングテクノロジーを統一した運用が容易になっています。
LaunchとDTMの比較
Launchを利用することによってできることを、2021年4月にサポート終了した「Dynamic Tag Management」(以下DTM)と比較して、Launch/DTM共通の特長と、DTMと比較した際のLaunchの特長に分けて紹介します。
DTM・Launch共通の特長
① Webサイトの表示速度を改善
Webページの表示速度を遅くする原因とされる、複数の分析タグの読み込みを最適化します。
② 作業効率向上による工数・コスト削減
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実装から公開(サイトへの反映)まで、Launch/DTMによって一括で行うことが可能になります。IT担当者や制作会社へのタグ設置等の依頼が不要となり、導入までの期間を大幅に短縮することができます。
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複数のツールのタグを同時に実装できます。個別にルールを作成する必要はありません。
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実装後、本番環境へ公開せずに設定を反映するステージングモードが備わっています。IT担当者や制作会社へ何回も差し替えを依頼しなくても、実装後の本番環境への影響や実装状況が確認できます。
③ 無償提供
Adobe Experience Cloudのアカウントがあれば無償で利用できます。
Launchの特長
① 軽い・速い
コア部分のコードサイズはDTMと比較して60%、GTMと比較しても40%小さいため、タグの読み込みが速くなります。
② 高い拡張性
あらかじめ用意された拡張機能「エクステンション機能」により、Adobe Analytics などのアドビ製品だけでなく、Facebookピクセル、Google広告 などのマーケティングソリューションとの連携が簡単にできるようになります。
DTMでは、ほぼアドビ製品のみ連携されていましたが、Launchではアドビ製品以外の幅広いツールとの連携が画面上で可能です。
また、エクステンション機能はベンダーや開発者が作成し、公開することができるため、対応ソリューションは今後増えていく見込みです。
例:Marketo Engage、YouTube Player Embed、Twitter Universal Website Tag etc.
③ 柔軟なルール設計
新たに設計されたルールビルダーにより、これまでのタグ管理ツールでは難しかった、複数のマーケティングソリューションを組み合わせた発火ルールの設定ができます。
また、「3rd party tagの発火後に Adobe Analytics のリクエストを送る」といった複数のソリューションタグの発火順をコントロールできます。
④ APIによる自動化
管理画面で実行可能な操作は、すべてAPIを利用して自動化することが可能です。
定期的なリリースにともなうLaunchの設定作業などを、開発システムと連携して自動化することで、運用工数を抑えることができます。
⑤ 個別の実装内容を別のステージング環境に分けることが可能
DTMでは、ステージング環境用のタグは1つのみだったため、複数の設定者による変更内容を個別に検証することはできませんでした。
Launchでは、ステージング環境用のタグを複数生成することができるようになりました。
設定者が複数いる場合でも、個別の実装内容を各々のステージング環境で検証することが可能です。
DTMからLaunchへの移行スケジュール(アドビ社発表)
アドビ社の発表によると、DTMは今後段階的にサポートを終了します。
そのためDTMを利用中の企業は、下記のサポート終了スケジュールに留意しながらLaunchへのアップデートを計画する必要があります。
※2021年4月にアドビ社によるDTMの技術サポートは終了しました。
▼ 2019年7月9日 DTM上での新規プロパティ作成機能を終了
一般には、サイト単位でプロパティを作成して設定作業を行います。
2019年7月9日以降は、「新規サイトをリリースするにあたって、DTMで新規プロパティを作成して設定する」作業ができなくなります。
▼ 2020年7月14日(2020年10月に変更 2020/3/24修正) DTM上の全プロパティがRead-Onlyモードに変更
設定内容の更新が不可能になります。これ以降、ツールやルール、データ要素の作成または編集はできなくなります。
▼ 2021年1月12日(2021年4月に変更 2020/3/24修正) アドビ社によるDTMの技術サポート終了
参考:Adobe Experience Cloud リリースノート(2019年5月)
Adobe Community - DTM Plans for a Sunset
DTMからLaunchへ移行するために必要な作業概要
DTMからLaunchへ移行するために行う、一般的な作業例を説明します。
DTMでの作業
DTMで、移行対象のプロパティを開き、「Launchにアップグレード」ボタンをクリックすると、DTMの設定内容がLaunchにコピーされます。
Launchの移行作業が完了したら、DTMの移行対象プロパティを無効にします。
Launchでの作業
Launchのステージング環境でタグやツール等の挙動テストを行い、問題が無ければ公開します。
また、テスト時に想定した挙動がみられない場合は、必要に応じて設定内容を調整します。
設定内容によってはLaunchに互換性がない場合があるため、DTMからLaunchに移行する過程でのテストは非常に重要です。
タグ貼り替え作業
移行にともなうタグの貼り替え作業については、①DTMタグをLaunchタグに貼り替えて移行するパターンと、②タグを貼り替えずにDTMタグのまま移行するパターンの2つがあります。
それぞれのメリット、デメリットを考慮し、サイト状況や方針に合った方法を選択して移行できます。
① Launchタグに貼り替えて移行するパターン
Launchタグを設定すると、DTMタグではできなかった非同期読み込みを利用できるため、Launchタグに貼り替えることでページの読み込み速度改善に役立ちます。
DTMタグが設置されている全ページの貼り替え作業が必要となるため、作業工数・費用が掛かります。
② DTMタグのまま、貼り替えずに移行するパターン
DTMタグを貼り替えずに、DTMとLaunchの設定作業のみで移行を完了することもできます。
この場合、Launchの非同期タグによる速度改善というメリットは得られませんが、全ページのタグ貼り替えに掛かる工数・費用を抑えることができます。
ただし、テスト環境にステージング用のDTMタグが設置されている場合は、テスト環境、本番環境ともにLaunchタグに貼り替える必要があります。
参考:adobe - What does the recommended upgrade process look like?(英語)
まとめ
これから Adobe Analytics などのアドビ製品を導入する場合は、同時にLaunchを導入することでスムーズな設定ができます。
DACでは、Launchの導入・実装、およびDTMからLaunchへの移行作業もサポートします。
単純な計測コードを乗せ換える作業だけではなく、ページの表示速度などサイトパフォーマンスへの影響や古い計測コードの整理、サイトKPIと計測コードの比較など、ご要望に合わせて計測コードの見直しと改善案の提案も可能です。
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