博報堂DYグループの一員であり、デジタルマーケティング全体をカバーするビジネスを展開しているHakuhodo DY ONE。PhotoshopやIllustratorなどのクリエイティブツールで圧倒的なブランド力をもちながら、近年はクラウドサービスによって企業のデジタルマーケティング支援にも注力しているアドビ システムズ(以下、アドビ)。2社はこの10年間にわたって強固なパートナーシップを築いてきました。そのパートナーシップがクライアントにもたらす価値について、両社のキーパーソンに語ってもらいました。
日々進化するデータドリブンマーケティング
はじめに、データドリブンマーケティングの現状についてお考えをお聞かせください。
秋吉:デバイスが多様化し、生活者とのタッチポイントも複雑化している中で、狭い意味での広告だけでは生活者への有効なアプローチが難しくなっています。それぞれの生活者に即したコミュニケーションを行い、CRMによって関係を深め、LTV(顧客生涯価値)を上げていくためにデータを活用する。それがデータドリブンマーケティングの基本的な考え方です。近年では、個別企業がもつ1st パーティデータと、生活者全般の動向を捉える3rd パーティデータの両方を上手に活用しながらデータドリブンマーケティングの精度を上げていく動きがいっそう活発になっています。
竹嶋:データドリブンマーケティングへの取り組みが進んでいる一方で、データ活用のサイクルを確立できているケースはまだ多くはないと感じています。データ収集、分析、アクションまでの流れをつくった上で、そのアクションから得られたデータをもとにさらに次のコミュニケーションをデザインしていく。そんなサイクルを回すことができれば、より成果に結びつくマーケティングが実現すると思います。
秋吉:ターゲットに一度コンタクトできれば、その人の人物像がある程度わかります。それによって、次に配信するコンテンツをパーソナライズして、コミュニケーションの確度を上げていくことができます。それが、サイクルをつくるということですよね。
竹嶋:もう一つ、データを活用することによって、「集客」だけを目的にするのではないコミュニケーションが可能になります。これまでは、ターゲットをできるだけたくさん集客し、そのうちの何パーセントかがコンバージョンすればいいという考え方が主流だったと思います。しかし、データを上手に使えば、はじめから「コンバージョンしやすい人」をターゲットとすることができます。
秋吉:問題は、ターゲットを絞り込んでいくと、ボリュームがどうしても小さくなってしまうことです。そこで、ターゲットに類似性の高い生活者を探し出して、アプローチする対象のボリュームを増やしていく作業が必要になります。いわゆるターゲット拡張と呼ばれる作業です。重要なのは、コンバージョンをゴールにするのではなく、そこからさらに深いコミュニケーションを志向することです。先に申し上げたCRMやLTV向上という視点です。そのフェーズで広告コンテンツを上手に活用する取り組みも今後はより重要となります。
竹嶋:デジタル広告はこれまで獲得を目的とすることが多かったわけですが、それを継続的なコミュニケーションのために使っていくということですよね。
秋吉:そうです。データに基づいて、顧客に最適なクリエイティブを配信していくことでロイヤリティを高めていくという方法です。広告の役割が拡大していること。それもまた今日のデータドリブンマーケティングの一つの傾向と言えるのではないでしょうか。
デジタルマーケティング全体をカバーするソリューション
そういったデータドリブンマーケティングを実現するのがアドビの数々のソリューションというわけですね。Hakuhodo DY ONEとアドビは現在どのような関係にあるのですか。
竹嶋:Hakuhodo DY ONEには、2009年10月から10年以上にわたって、Adobe Experience Cloudとそれに関連するソリューションの販売パートナーになっていただいています。
秋吉:私たちがアドビのソリューションの主契約者となって、その機能をクライアントの課題や目的に応じて適宜ご提供しています。
Adobe Experience Cloudについてご説明ください。
竹嶋:アドビは現在、「世界を動かすデジタル体験を」というミッションを掲げています。製品のユーザーすべてに新しい体験価値を提供するのが私たちのミッションで、それを実現するクラウド事業の一つが、デジタルマーケティングを支援するAdobe Experience Cloudです。Adobe Experience Cloudには大きく4つの製品群があります。主に広告展開に使用する製品が属するAdobe Advertising Cloud、データ分析や活用に使用する製品群が属するAdobe Analytics Cloud、メールやLINEといったコミュニケーションのプランニングやそれらに使用するコンテンツ・アセット管理などを行う製品群が属するAdobe Marketing Cloud、そしてECに使用するAdobe Commerce Cloudです。
(Adobe Experience Cloud の詳細についてはこちらをご覧ください
https://solutions.hakuhodody-one.co.jp/blog/adobe-experience-cloud )
秋吉:私たちは、その中でも特にAdobe Advertising Cloudの活用をクライアントにご提案しているのですが、実際には4つの領域はすべてシームレスにつながっています。さらに他のクラウドサービスとの連携や、 AI技術とマシンラーニングを組み合わせたテクノロジー「Adobe Sensei」の活用も可能です。そのすべてのソリューションを活用して、マーケティングコミュニケーションの課題解決の支援をすること。それが、私たちがアドビとともにクライアントに提供できる価値であると考えています。
今日、デジタルマーケティングに無縁の企業はいないと考えれば、あらゆる企業がそれらのソリューション群の機能のうちのどれかを活用できると言えそうですね。
竹嶋:おっしゃるとおりです。少し前の調査になるのですが、トライベック・ブランド戦略研究所が実施した「WebSite価値ランキング2017」で上位10位の企業のうち8社、上位30社のうち21社が、何らかの形で「Adobe Experience Cloud」の機能を使用されています。
秋吉:Hakuhodo DY ONEはデジタルマーケティングに関わる全領域のビジネスをカバーすることを目指しています。そして、アドビのクラウドソリューションはデジタルマーケティングをフルファネルでカバーする製品です。そう考えれば、2社のパートナーシップは必然的と言っていいと思います。
クライアントとともにシナリオを描く
これらのソリューションとクライアントの課題を適切につないでいくのがHakuhodo DY ONEの役割ですね。
秋吉:そうです。ソリューションを使ったシナリオをつくる役割と言ってもいいかもしれません。クライアントの課題をお聞きして、まずはその最適な解決方法を考えていきます。リスティング広告がいいのか、バナー広告がいいのか。その場合、どのようなデータが必要になるのか。獲得後に離脱してしまったユーザーに継続的なアプローチをするにはどうすればいいのか。コンバージョン後にはどのようなコンテンツでコミュニケーションを継続していけばいいのか──。そのようなシナリオを描き、そのプロセスの要所要所でアドビのソリューションを活用していく。そんなイメージですね。
広範な機能をもったソリューション群があることによって、緻密なシナリオが描けるようになっているとも言えそうです。
竹嶋:そう思います。一例を挙げると、これまでのカスタマージャーニーのシナリオでは、クリックからコンバージョンまでのプロセスを描き切れていないケースが多かったように思います。広告をクリックしたユーザーがそのままコンバージョンに至るわけではありません。クリックからコンバージョンまでの道筋を緻密にデザインすることによって、コンバージョン率を上げることができます。私たちのソリューションを使っていただけば、そのようなアプローチが可能になります。
ソリューションを活用して成果を上げていくために必要なことは何でしょうか。
竹嶋:これはクライアントへの要望ということになってしまうのですが、広告投資のKPIを一緒に考えていく機会をいただければ、より大きな成果を上げられると考えています。
秋吉:デジタル広告のKPIにはCPC(クリック単価)やCPA(顧客獲得単価)などが設定されることが多いわけですが、ソリューションの活用によってできることが変われば、当然KPIの設定も変わってきます。どのようなKPIが最適かということについて、クライアントと、博報堂DYグループの広告事業会社、Hakuhodo DY ONE、アドビの担当者のフルメンバーでディスカッションさせていただくことができれば、更に成果を出すためのシナリオを描くことが可能になるはずです。
クライアント側の担当者は、広告・宣伝、マーケティング、Web、情報システムなど多岐にわたりますよね。
秋吉:すべてのご担当者が参加してワンテーブルで対話できるのが望ましいのですが、それが難しい場合は、情報を共有できる仕組みがあるといいと思います。例えば、Webの担当部署と広告担当部署で情報を共有し、さらにデータまで共有できれば、Webコミュニケーションと広告の両方の精度を上げていける可能性があります。
竹嶋:一つのプロモーションを行う場合でも、ターゲットのセグメントごとにチャネルを変えたり、離脱した人をフォローしたりするコミュニケーション設計が実現すれば、成果は確実に上がります。まさに、そのようなトータルなシナリオを支援できるのがアドビのソリューション群です。
組織の「サイロ化」がデータのトータルな活用のハードルとなっているということをよく耳にします。部門を超えたデータ活用を進めることで、逆に組織のサイロ化が解消していくということもありそうですね。
秋吉:データドリブンで組織を最適化するということですよね。そこまで含めたご提案をさせていただけるのがこのパートナーシップの強みです。もちろんHakuhodo DY ONE側も柔軟な組織構成を常に目指して、クライアントに提供できる価値を最大化していく必要があると考えています。
課題を解決するパートナーシップの力
アドビから見て、Hakuhodo DY ONEのパートナーとしての魅力はどのようなところにありますか。
竹嶋:インターネット広告の黎明期から活動している老舗ならではナレッジがあることが大きな魅力であると感じています。それから、広告運用だけでなく、デジタルマーケティング全体を包括する視野をもっているのも魅力ですね。そのような広い視野があることによって、私たちが提供するソリューションの「掛け算」を一緒に進めていくことが可能になるからです。ソリューション販売は、パッケージ製品と違って、ビジネスパートナーの存在があって初めて成立するビジネスです。これからもこのパートナーシップをより強固なものにしていきたいですね。
秋吉:Hakuhodo DY ONE内のリソースはもちろん、博報堂DYグループがもっている知見や経験とアドビのソリューション力を組み合わせることによって、クライアントにさまざまなご提案をし、デジタルマーケティングの課題を確実に解決していくことができる。それがこのパートナーシップの強みだと思います。ぜひ、これからも力を合わせていきましょう。
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アドビ システムズ のクラウドサービス
アドビのクラウドサービスは、デジタルマーケティングを支援するAdobe Experience Cloudのほかに、Adobe PhotoshopやAdobe Illustratorなどのツールから構成されるAdobe Creative Cloudと、PDFや電子サインから構成されるAdobe Document Cloudの3つの柱から構成されています。Adobe Experience Cloudには、主に広告展開に使われるAdobe Advertising Cloud、データ分析に使われるAdobe Analytics Cloud、コミュニケーションのプランニングなどに使われるAdobe Marketing Cloud、ECに使われるAdobe Commerce Cloudの4つの機能があります。
広告領域で活用されるAdobe Advertising Cloudはさらに、プログラマティック取引を最適化するDSP、リスティング広告などへの自動入札を最適化するAd Cloud Search、バナー広告のクリエイティブを最適化するAd Cloud Creative、動画広告のバイイングを最適化するAd Cloud TVの4つの機能に分けられます(Ad Cloud TVのみ日本国内では未リリース)。それぞれの機能は日々進化を続けています。
また、あらゆるデータを収納してリアルタイムに活用することができるAdobe Experience Platformが海外では2019年3月に発表されました。これによって、クラウドサービスの統合性がいっそう高まることになります。
■プロフィール
竹嶋 拓也
アドビ システムズ アドバタイジング クラウド統括本部 執行役員
2019年2月にアドビ システムズ 株式会社にアドバタイジング クラウド統括本部 執行役員として入社。アドビ以前には、アマゾンの広告事業にてセールスマネージャー、株式会社medibaにて広告商品の開発・運用の責任者を務める。また、株式会社博報堂にて営業職・インタラクティブマーケティング職・ビジネス開発職、大手レコード会社でデジタルビジネスマネージャーなど、デジタルマーケティング分野での要職を歴任。デジタルにおける卓越した顧客エクスペリエンスを企業マーケティング活動に展開させることに貢献。
秋吉 哲也
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム ソリューションサービス本部 第三アカウントソリューション推進部
2014年株式会社アイレップ入社、2019年デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社に出向。検索連動型広告やディスプレイ広告などの運用型広告を統合管理し、配信の最適化を行うプラットフォームを担当。現在はデータドリブンマーケティング推進に従事。
本記事は博報堂DYグループの「“生活者データ・ドリブン”マーケティング通信」より転載しました
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