アドテクを中心として広告業界のトレンドについて発信をする『DAC AD TECH BLOG(アドテクブログ)』。今回は「ExchangeWire」にて掲載いただきました、Exchange Wire Japan野下氏による弊社 プロダクト開発本部 アドプロダクト開発室 プロデューサー 小林武帥(こばやし たける)へのインタビューをお届け致します。
アドテクノロジーやスマートデバイスの普及を受け、大きく市場環境が変化しつつあるディスプレイ広告。2014年の振り返りと今年の見通しを、DACプロダクト開発本部アドプロダクト開発室プロデューサー 小林武帥 氏に伺った。
アドプロダクト開発室の業務内容と担当領域を教えてください。
2014年4月に新設されたアドプロダクト開発室では自社の広告商品の開発、並びに啓発を行っています。新しい広告商品の開発では、どのような機能やオプションが必要か、広告販売や運用経験が豊富なスタッフが日々検討を行い、サービスに反映しています。また、商品の啓発や改善については、主にDACグループのDSP「MarketOne®」やDMP「AudienceOne®」などを中心に対応を行っています。最近では、広告主が持つCRMなどのデータを基に、最適なオーディエンス・広告枠を見つけ出し配信する「コンバージョン拡張」「キーワードターゲティング」「リターゲティング」機能※1や、オーディエンスを属性や興味関心などで分類する「カスタムターゲティング」機能※2 などの改善を行いました。
※1:いずれも「MarketOne®」提供
※2:「AudienceOne®」にて提供。「MarketOne®」においても、ExchangeWireへの記事公開以後、提供を開始。
日本のディスプレイ広告市場において、2014年は一言で言うとどんな1年でしたか?
広告の自動取引(プログラマティック)が更に加速した一年でした。デマンドサイドでは、広告主、広告会社へのDMPの導入が進み、データを活用したデジタルマーケティングが広く浸透しました。DACのDMP「AudienceOne®」も導入が進んでおり、大手広告主を中心に多くの企業にご利用頂くことが出来ました。
また、特定の売り手と買い手だけが参加し、クローズドな環境で取引が行われる「プライベートエクスチェンジ、プライベートマーケットプレイス」※3 が徐々に普及してきています。 誰もが売り手、もしくは買い手として参加できる従来のオープンオークション形式のRTB取引と比較して、媒体としてのブランドを毀損せずに収益を確保できる手段として、特にサプライサイド(媒体社)からご好評を頂いています。
ディスプレイ取引以外の領域においても、AdFlowやKaizenPlatformなどクリエイティブ制作・進行管理やランディングページの最適化において新しいソリューションが浸透し、自動化が進みました。
※3: プレミアム媒体の特定枠において、入札者(広告主)を限定して行われる広告取引のこと。「プライベートエクスチェンジ」の詳細は、過去紹介している記事を参照(リンク)。
2014年のディスプレイ広告市場において「これは発展したな」という分野はありますか?
データフィードを活用した広告配信でしょうか。サービスとしては以前から提供されていましたが、2014年に活発に導入が進んだと感じています。Criteo※4を導入する企業が増加しましたし、特にGoogleやfacebookにおいてもサービス提供を行ったことがデータフィードを活用した広告配信が普及を後押ししたのではないでしょうか※5。また、DFO(データフィード最適化)のソリューションを提供する事業者が増えたことで、広告主がデータフィードを手軽に利用し、ユーザーの具体的なニーズを反映した広告の配信を行えるようになったため、広告効果も高いという認識が広がりつつあります。
但しこのようにユーザーの行動と深く関連した広告の場合、ユーザーのプライバシーにも十分に配慮する必要があります。DACは、インターネット広告推進協議会(JIAA)や、Data Driven Advertising Initiative(DDAI)の取り組みを通じて、行動ターゲティング広告などで行われるユーザー情報の取得内容やオプトイン/アウトの重要性についての啓発活動を行っています。また米国のインターネット広告の業界団体IABとも意見交換を行い、ユーザーが十分な判断材料をもとに情報提供の可否を選択できるような環境づくりに取り組んでいます。
※4:CRITEO社
※5:Google Adwords動的リマーケティング広告、facebookのデータフィードを活用したサービス(feedforce社提供)
海外、および国内で注目している動きはありますか?
そうですね。海外ですと、米国では、データの価値が明らかになるにつれオーディエンスデータの囲い込みの動きが加速しています。一部の大手広告主は既にDSPやDMP、トレーディングデスクのインハウス化を進めています。また大手広告会社WPPはトレーディングデスク「X-axis(ザクシス)」※6と、自社DMP「Turbine」を 連携させるなど、プログラマティック対応を進めています。また、FacebookやTwitterといった各プラットフォーマーは、自社のカスタムオーディエンス機能と広告主が所有するCRMデータを掛け合わせることで広告効果を高めるといった仕組みを提供していますね。ただ、自社で抱える配信データを外部にはフィードバックしない※7といった点が見受けられます。
一方日本では、広告主や広告会社などのソリューションベンダーがオーディエンスデータを本格的に活用できる環境が整いつつあります。今年はより一層データドリブンなマーケティングが普及していくことでしょう。日本は米国のように無数の技術やプレイヤーが誕生し、統合を繰り返しながら市場そのものが急成長していくという流れではないため、米国と比較するとやや緩やかなスピードになる可能性はありますが、いずれにしてもプログラマティックが加速していくことは間違いないと思います。
※6:X-axis(ザクシス)
※7:データを活用して配信を行うことが出来るが、その結果に関して細かく分析を行うことは出来ない
ディスプレイ広告において、2015年に注目しているキーワードは?
位置情報データの活用が挙げられますね。位置情報はこれまでも広告配信への利用が期待されていましたが、精度など技術面に課題があり本格的な普及の妨げになってきた、という状況があります。
現在位置情報は、ターゲティングそのものというよりも、オーディエンスの特性を推定する『プロファイリングの材料』としてどう活用するか、が注目されています。従来、オーディエンスの属性や興味関心の推定には、ブラウザの閲覧データが活用されてきました。ただ、スマートデバイスではブラウザよりもアプリを利用される傾向が強く、かつアプリ上は従来の方法ではデータの取得が難しいため、オーディエンスの行動の推定を行うには充分な情報量とは言えませんでした。しかし、位置情報であればアプリでも取得が可能です。そのため、オーディエンスの位置情報がスマートデバイスによって把握できるようになると、より精緻なオーディエンス像の推定が可能になる、ということで注目が高まっています。
ただし位置情報の活用は、Web上の行動と同様に入念なプライバシーへの配慮を行う必要があり、個人情報と同じ扱いをする必要があると考えています。国や業界内のガイドラインの整備を整え、生活者の日常をより便利で快適なものにするという視点でサービスを設計していく必要があるでしょう。
日本のディスプレイ広告市場が成長するために「解決すべき課題」はなんでしょうか?
新たな広告フォーマットの開発や広告スペースの改善、統一にとどまらず、データ活用のための更なる環境整備が必要だと言えます。また、蓄積したデータが何を意味しているのかを正しく理解し、有効に活用できるいわゆるデータサイエンティスト、データアナリストの育成が急務だといえます。また、国としての整備という話にはなりますが、何が個人情報の境目なのか?という整理やデータ利用の考え方自体も整備していく必要がありますね。
2015年予測:2015年のDACのディスプレイ広告に対する方向性、期待値は?
一人のオーディエンスが複数の端末を持つことが一般化しているなか、デバイスを超えた行動データの統合を行うことでより最適なプランニングが可能になると思います。
たとえば、生活家電の購入に際して「情報収集や閲覧はスマホで行うが、実際の購入はPCで行う」といったように、一人のオーディエンスが商品購入という一つの目的に対して、デバイスによって異なる行動をするケースがあります。現状では、「コンバージョン直前のデバイスと接触メディア」のみ広告効果があった、として評価されてしまうことが多々あります。特にスマートデバイスにおいてはその傾向が高いのでは、と感じています。
しかし、複数のデバイスでの行動を統合すれば、情報収集に利用されたデバイスやメディアもコンバージョンに貢献したとされ、正当な評価を受けることが可能になります。大きな意味で“アトリビューション分析”を行う、というイメージですね。スマホとPC、またスマホとデジタルサイネージ、店頭のポスターとスマホなど様々なメディアで行うことが出来るイメージです。
また、スマホで生活家電の情報収集を行ったオーディエンスのPCに広告を配信することで、コンバージョン・レートの精度を高めることができるかもしれません。複数のデバイスをまたいで行動するひとつのオーディエンス像といったものを複合的にとらえて向き合っていくことが、ユーザー、広告主、媒体社全てが最大のメリットを享受できる環境を作っていくことにつながるのではないでしょうか。
DACは、オーディエンスデータを活用し、これまで以上のスピード で、ディスプレイ広告市場の発展に貢献していきます。
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本記事はExchangeWireの記事、「インダストリー・リーダーDACが語る、ディスプレイ広告市場の現状と今後~データ活用が握る市場成長の鍵~」を編集したものです。オリジナルコンテンツを読みたい方は、 こちら(リンク)からどうぞ。
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