アドテクを中心として広告業界のトレンドについて発信をする『DAC AD TECH BLOG(アドテクブログ)』今回は2016年の取り組みを振り返っていただいたインタビュー内容の後編をお届けします。後編は、広告会社さんとタッグを組んで広告主さん向けに提案を行っているメディアサービス本部 第2営業局のシニアマネージャー 笠原さんとマネージャー 真尾さんにお話を伺いました。
左:真尾さん、右:笠原さん
メディアレップとして、多くの広告会社さんや広告主さんと向き合っているかと思いますが、2016年は広告会社さんや広告主さんからの案件相談としてはどのようなものが多かったのでしょうか。
笠原:広告主さんが抱えている課題ってそんなに変わっていない気がしていて、解決の仕方が変わってきているんだと思うんですよ。たとえば、ピッチの話で言うと圧倒的に「DMP」を絡めた提案がほしい、とかそういったデータ周りの相談が増えているなという印象が強くあります。あとはやはり解決策として、従来は認知を取りたい場合は「Yahoo! JAPANブランドパネル」だったけれども、それが「YouTubeマストヘッド」や、Twitterの「ファーストビュー」、LINEスポンサードスタンプ、とメニューとしても動画やソーシャルが絶対的に多かったかな、という印象がありますね。
真尾:2015年よりもっと以前なら、私たち営業は『メディアプランニングのことを考えていればそれで大丈夫』という考え方も、ある程度通用していたと思います。これがおそらく2015年から徐々に変化して、2016年からは明確に変わった、と思います。
具体的にはどう変わってきたのでしょうか?
真尾:たとえば『メディアだけ』の視点だと、クライアント(広告主)さんの要望は「ブランディング」なのか、「獲得」なのかという大きな軸が2つあり、それを一生懸命解決するメディアプランを考えれば済んでいたというところがあります。それが2016年になってくると「データ分析」や「データを絡めた提案」「CRM」「カスタマージャーニー」といったものを考えてご提案する機会が増えてきました。「CRM」「カスタマージャーニー」まで把握したうえでご提案をさせていただいたほうが、クライアント(広告主)さんとしては望ましい姿になってきていると思います。それをやれるような人材になっていってくれ、っていう要望が明確になってきたのかな。
そのご要望に対しては、できる営業メンバー・できない営業メンバーがいますし、カスタマージャーニーやCRM、データ周りの専門的な分析は、営業メンバーのみの対応では限界があったりします。幸い、DAC内には様々な専門知識を持った部署がありますので、テクノロジー領域に強いメンバー、開発メンバー、普段から媒体社と密にコミュニケーションを取っているメディア部などと連携して提案を行うことが2016年度は格段に増えました。
以前は自分たちだけでも提案出来ていたところが、今は他部署と連携してやらざるを得ない状態になっている、ということなんですね。
真尾:ほんとにそう。
笠原:そう。領域が広がっている感じですよね、やっぱり。メディアレップなのでメディアの仕入れをやっていればいいっていうような単純なものはあんまりなくて。
真尾:もちろん最終的には、メディアで取らないとどうしようもないというところでメディア出稿に落ち着くことは多いのですが、クライアント(広告主)さんのニーズは改めて、メディア視点ではないので。私たち営業は単純にメディアプランを提案するだけではなく、“プロ”のメディア部と“プロ”のアドテクチームなどと連携して全体を取りまとめるプロデューサーという立場かな、そこまでを求められることが増えていますね。
笠原:あとは、にわとり卵の話になっちゃうんですけれど、今アプリプロモーションの引き合いが増えているんですが、これってニーズとしては(元々)あったんだけれどDACで受けられなかったのが、専門のチーム作ったことで受けられるようになった、という形なんですよね。またDMPなどの相談が来た時も、今までは営業でいったん受けてから関連部署に話を展開するという形だったのが、直接相談を受けられるチームが出来たので拾える案件が増えていますね。
真尾:LINEに関してもそうですね。DACではビジネスコネクトの「DialogOne®」「LINE公式アカウント」の連携等含めて、LINEにはとても力を入れており、広告会社さんにも評価を頂いていますが、今ではメディア部のLINEチームのメンバーが(営業ではないものの)営業並みにLINEを広告会社さんへの提案を行えているという状況があって。
笠原:そうだね、DACは「LINE強いよ」というところを我々からも発信をしてはいるんですが、広告会社さんにLINEチームを連れて行って「LINEについての知見ありますね」と認識いただくことで具体的なご相談が来るというのがありますね。FacebookやTwitterに関しても「Sherpa」というグループで開発しているツールをフックにドアノックをして、案件を頂けるケースも増えてきていて。それを踏まえると、対応体制を作ったことで「ニーズとして元々あったものを受けられるようになる」というのと、今後もこういうニーズが増えてくるからチームを作っていく必要がある、というところですよね。
クライアントの中で“インハウス化” “ハウスエージェンシー化”が進んできている
笠原:DACは博報堂グループの企業ではあるんですが、僕たちが所属する第2営業局は博報堂系を除いたすごくさまざまな広告会社さんを担当していまして、特に真尾が担当しているような広告会社さんはインハウス化が進んでいるんだよね。
真尾:そうですね、すごく進んできていますね。
笠原:広告主さんのインハウス化が進んできている中で、なんとなくハウスエージェンシーっぽいものを作るんだけれど知見が少ないケースもあり、そういったところから結構まとまった相談が来ます。要は「ビジネスパートナーとして一緒にやってくれませんか」という相談が多いですね。2016年は博報堂デジタルとか、電通デジタルとか、「何とかデジタル」というのができた年だったりすると思うんですが、デジタルだけ切り出そうという視点は広告主さん側にもあって。
真尾:デジタル広告は『広告実施した結果、データが貯まる』というのがポイントだったりもするので、広告主さんの方に知見が貯まってきているんですよね。そうすると、広告会社さんに広告の結果の蓄積がされないとなかなかそこに追い付いていけない、というところも出てくる可能性もあって。
「広告会社さんよりも、広告主さんのほうがリテラシーが高い」という状態も出てきている、ということですね。
真尾:そうですね。とはいえ、広告主さんは同業種のノーム値や最新の媒体トレンド情報の収集などは自社だけでは限界があるとおっしゃいますし、メディアレップとハウスエージェンシーとのお付き合いというのは可能性として広がってきていると感じています。大手の広告主さん・ある程度規模の大きい広告主さんに関しては、「ハウスエージェンシー」「インハウス」のが動きとしては出来つつある、という状況です。
ハウスエージェンシーさんはクライアントに非常に近いため、決裁権に近い方々という点では比較的お話は進みやすいですね。
DACはパートナー事業を行っているので、向き合いとしては「広告会社」さんで、広告主さんのところってなかなか見えないというところがありますものね。
笠原:そうですね。テクノロジー領域については、直接広告主さんとのやりとりもあるかと思います。ただメディアに関しては完全にパートナー事業として必ず広告会社さんとご一緒させていただくようにしています。もし仮に直接広告主さんと取引をやってしまうと、色々な広告会社さんに「あれ、DACさんってもうお付き合いできないですよね」って言われかねないので、そこは注意しながら、広告会社さんとお付き合いさせていただいています。
では、広告会社側の状況としてはどのような形でしょうか。
笠原:僕などが担当している広告会社さんは、総合だとか、中堅の総合とか、大きめのハウスエージェンシーだったりするんですけれど、やっぱりデジタル人材を出してほしいというニーズが多いですね。常駐者がほしい、とか。
スキルでいうと、どのような人材のニーズが高いのでしょうか?
笠原:広告会社さんによって様々です。たとえば大手の広告会社さんでも、意外とフロントの営業さんにはデジタルに詳しい方が足りていなくて、デジタル全般の業務推進寄りの人が欲しかったり。大手のハウスエージェンシーだと「テクノロジー系でサポートしてほしいです」と言われていたりとか、色々なレベル感やニーズがあります。デジタルに対して各広告会社さんが抱えている課題って意外といろいろあって、結局その中の最大公約数をDACとしてどう対応していくのか、という話は増えてきています。中でも1番多いのは、運用型を回せる人だったり、さっき真尾が言っていた「プロデューサー・全体設計できる人」みたいな話だったり、そういう相談っていうのは結構多いのかなっていう気はしていますね。
以前からDACの人間が各広告会社さんに常駐しているというのはあったと思うのですが、常駐者に求められる要件が変わってきているっていう感じでしょうか。
笠原:そうですね。今までってなんとなく純広告のプランナーとして常駐しているケースが多かったんですが、常駐の仕方とかニーズが変わってきているというのはあって、そこを大きいくくりでいうと運用型の台頭というのは大きいですね。
これは社内の関係チームともよく話しているんですけれど、たとえば業界初心者の新メンバーに対してだと、今まではまずプランニングについて教育をして、営業なりメディアなりトレーディングデスクなりに配属していくという考え方だったのですが、学ばせる内容をちょっと変えようという話をしています。たとえば僕らで担当している広告会社さんでDMPやソーシャルのニーズが高まるという話があるのであれば、僕らのチームに入れる前提で最初からトレーディングデスクで修業させる人を増やしていったりだとか。
早い段階からニーズがあるスキルを持った人材を育てるという考え方ですね。
笠原:ええ。今まさに取り組み始めているところなんですが、たとえばグループ会社に運用型広告に強みを持つアイレップがあるので、市場ニーズの高いGDN・YDNを習得させる、なんてこともしています。
「オペレーション対応」はどの広告会社も抱えている課題
真尾:私のチームでいうと、担当させていただいている広告会社さんより、企画提案以外の項目でも様々なご相談を頂くようになりました。広告会社さんのほうで困られている内容は日々変化していますが、例えば『レポートの集約作業』みたいなのが広告会社さん側で「本当に時間がかかって困っている」という話は多く頂いている状態なので、そういったレポートだとか細かい作業の切り出しをDACで受けられないかというオペレーションのご相談を頂いたりしています。
笠原:オペレーションの相談はやはり多いですよね。常駐したメンバーも1日ずっとレポーティングしている、なんてこともありますし。例えば大手の広告会社さんでも売り上げのシェアとしてGDN・YDNなどの運用型が大きかったりするので、常駐者も、もちろん得意先に一緒に行くのでそのレポートをまとめていたりだとか。
規模の大きい広告会社さんであれば、自社でそういった(レポーティング用の)システムを作ることもできますが、普通はできないですもんね。
真尾:そうなんですよね。広告会社さん側ですごく困っていて、「これって他でやってくれないかな?」っていうのをご相談頂いて、そこをどうやって解決させていただこうかっていうのがうちのチームの役割だと考えています。今は運用型広告が本当に増えてきていて、運用型広告というのは入札だとか、管理画面見て何かしらやらなければいけないっていうことではあるんだけれど、広告会社さんで入札するのは担当者さんに限界が出てきているので、そこを切り出してDACでお願いしたい、というご要望も徐々に増えてきていますね。
DAC側で『トレーディングデスク』の役割を担うということですね。
真尾:はい。広告会社さんの中での作業負担だとかどこにリソースを集中させるのかというのを考えると、営業系に人員を割いてそれ以外のところに関しては外に切り出そう、という形になるケースが多いようです。そこで切り出す先をどこにしようか?というところで、DACにご相談いただいているのですが、例えばLINEであれば「DialogOne®」があったり、FacebookやTwitterだとしたら「Sherpa」があったりだとか。そういったところで、お話を頂けるようになってきているのではと思っています。
笠原:そこが大きいですよね。広告会社さんからすれば、自社でオリジナルのツールを持っているというのはDACに頼む理由としてはあるかなと思っています。やっぱり広告会社さんからすると「レップなんて運用型は得意じゃないよね」と思われていますが、昔と比べるとだいぶ見え方は変わってきたかなと。まだまだですけれど、ね。
真尾:あとはやっぱり、「Sherpa」のいいところってトーチライトとDACのツールとして媒体社から認められ、DACとして自信をもってご紹介出来るツールになったので。
笠原:そうだよね。「Sherpa」、「DialogOne®」ともに媒体が“一押し”だと言ってくれるので。
真尾:「Sherpa」は、最初はなかなか浸透しなくってこれはどこまで…というところはあったんだけれど、何回かのアップデートでここまで成長出来て。「DialogOne®」に関してもやっぱりテクノロジーチームとメディア部と営業と3者一体になってご提案を進めることが出来たからこそ、ここまでの案件獲得ができたのかな、と思っています。2年前には考えられなかったですね。
DialogOne®は2017年のアワードでも最高賞の認定をされていますし、かなり勢いはありますよね。
真尾:「DialogOne®」は画期的ですね。ツールとしてトップレベルを維持することが出来ていることで、後追いのツールのレベルであれば、今の活気はないんじゃないでしょうか。プレスリリースをDACとしてしっかりと出せるようになったというのは大きいなと思っています。リリースをご覧いただいて問合せを頂くケースも多いです。
笠原:あとそこでいうと、やっぱり「Sherpa」とか「DialogOne®」のようなツールって、まさに広告会社さんに提供するツールですよ、一緒に広告主さんに提供できるツールですよということで打ち出しているんですよね。意外と困っている広告会社さんって結構あるし、必要としているけれど特定の広告会社さんの色がついたツールって使いたくないし。そういった意味で組みやすい相手に見てくれているかもしれないな、というのは最近思っています。
2017年以降のトレンドや今後の取り組みについて教えてください。
笠原:以前からマスとデジタルの融合みたいな話は出てきていますが、今年はより加速すると思うので、そういったのも積極的に提案していきたいですね。手段としてオフラインデータをオンラインにくっつけるなどは技術的に出来るようになってきているので、そこはスケールするんだろうなと思っています。
また、計測できるデータが増えていることでダッシュボードの導入が今後ますます増えていくでしょうね。DACとしてもそのニーズに沿うであろうプロダクトとして、「X MediaOne」というソリューションを新規で開発しているのですが、今年はこちらの導入ならびにサポートをしっかりと推し進めていければというところと、さきほどお話した「オペレーション」面のサポートも強化していければと思います。
真尾さんはいかがでしょうか?
真尾:そうですね。すでに始まってはいますが、店頭まわりとデータのマネタイズっていうのが、今後増えてきますよね。店舗とデータ、各ユーザーとのデータだったりとか、位置情報が関係してきたりだったりとか、たぶんリアルに増えてくるのってそこじゃないかな。店頭との相性のよいメディアなり手法なり、いま非常に伸びていますが、そこをどう活用できるのか?データをどう生かしていくのかというのが、ビジネスチャンスになっていくので、うちでもっと考えなくてはいけないと思っています。
あとは引き続き、今まで以上にマス・紙媒体・チラシからデジタルへの取り組みが進んでいくと思います。例えば不動産業界だと、既存のインターネットの広告出稿しかまだまだ出来ていなくて、マンションの展示会だとかそういうとデジタルの連携が完全にうまく行っているところはまだまだ少ないと思うんですよね。オンラインでの仕組み化が出来ているのは、全体の本当に何分のイチっていうところだったりすると思うので、そういった取り組みももっとやっていくべきだと思います。DACでいうと、技研商事さんとの取り組み※1や、LINE ビジネスコネクト(DialogOne®)がその1つになるかと思います。
※1:DACのDMP「AudienceOne®」と技研商事インターナショナルの商圏分析ツール「MarketAnalyzer(TM)」が連携
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笠原さん、真尾さんありがとうございました。
今回ご紹介した内容にご興味のある方は、下記よりお問い合わせください。