「Adobe Analytics」は、Adobe社が提供するアクセス解析ツールとして、広く知られています。
Webサイトから取得するデータ項目のカスタマイズがしやすいことが特長で、取得可能なデータ項目(ディメンション数)は最大275個にもなります。さらに、カスタマイズもできるため、自由度が高い反面、サイトに実装した後の管理が複雑になります。
そこで今回は、複雑な管理をまとめるドキュメント「SDR」の作成方法とメリットを詳しく解説します。Adobe Analytics の運用にお悩みの方は特にご参考にしてください。
SDR(Solution Design Reference)とは?
SDRとは Solution Design Reference の略で、訳すと「ソリューション設計の参考資料」ですが、ここでのソリューションは Adobe Analytics のサイト内ユーザー行動計測のことで、計測設計状況を纏めたドキュメントのことをいいます。
例えば、製品カタログの資料請求のCVを取得する、というのを Adobe Analytics で設定したときに、「製品カタログの資料請求のCVを取得中」だけを記録しても、他の人が見た時に、どうやって実現しているのかがわかりません。
そこで、具体的に計測実装状況をまとめて、
「資料請求ページで『製品カタログ』が選択され、かつサンクスページ(https://xxx.com/catalog/thanks/)が読み込まれた、という条件で計測する」
このように、詳細を纏めます。
次はディメンション設計の例です。ユーザーが製品ページを閲覧したときに、ページソースから閲覧した製品の製品IDを取得する、というのを Adobe Analytics で設定したときは、
「製品ページ(https://xxx.com/product/配下)が読み込まれたときに、class名”productid”が付与されたdivタグからテキストを抽出する」
というようにSDRに纏めます。
このケースでは、サイト側の仕様が変わると計測に影響が出る可能性があるため、特にしっかり記録を残す必要があります。
Webサイトに Adobe Analytics を導入すると色々なデータを計測できるため、例のような実装がどんどん追加されていきます。そのため、実装状況をまとめて置かないと実装した人以外は誰もわからない状況ができてしまいます。
さらに、Adobe Analytics で計測できるデータ項目(ディメンション)の数は、最大275個もあります。(変数 eVar、prop の合計)これを企業独自にカスタマイズして利用するため、非常に自由度が高いのですが、これもきちんとまとめて置かないとわからなくなってしまいます。
Adobe Analytics の実装は、最初はツール導入時にWebサイトの目標や導線に沿った計測データ項目を決めてまとめて実装します。この時は設計をまとめたドキュメントを作成している場合が多いです。
しかし、計測したい項目を追加したり、CVポイントを追加したりと、途中で色々追加することで、ドキュメントに記載のない実装がどんどん増えていきます。
その後、担当者が代わったり、サイトリニューアルなど大規模な改修をする時に、現状がどうなっているのかを確認しようと思うと、Javascriptコードやタグマネージャーの設定内容を全部見ていかないとわからない、という状況に陥りがちです。
原因は、Adobe Analytics の自由度が高いことによって、独自で作成した管理ドキュメントでは手に余る管理の複雑さにより、ドキュメント更新の運用が回っていないことだと考えます。
この複雑な実装状況をまとめることができるものがSDRです。ディメンション、指標の一つ一つに、どういった定義で計測するのか、どのように実装しているかを詳細に記録します。
SDRを作成するメリット
SDRは Adobe Analytics の実装状況が変わる度に都度更新を行い、最新の情報を管理することが大切です。大切なことはわかっているのだけれど、何の役に立つのか、時間をかけるだけのメリットがあるのか、具体的な説明が難しいこともあるでしょう。
そこで、ここではSDRを作成し、最新情報を管理するメリットを説明します。
① 追加実装の時に、実装者が既存実装を理解できる
計測項目の追加やCVポイント追加、サイトリニューアルなどによって Adobe Analytics を追加実装、修正することがあります。追加実装するには、まず現状の実装状況を把握する必要があります。
SDRがあれば、現状をすぐに把握して、必要な追加実装を検討することができます。逆に、SDRがない場合は、現状把握をするために、一からSDRのような実装状況をまとめる必要があります。追加実装する度に、現状把握を一から行うのはSDRの情報を最新の状態に保つより時間がかかる作業であることは明白なことでしょう。
もし、実装担当者が代わっていなければ、現状把握はそこまで時間がかからないかもしれません。しかし、属人的な管理は担当者が代わることで結局、現状把握に時間をかけることになります。SDRは Adobe Analytics の実装引き継ぎ書にもなるのです。
また、Adobe Analytics でディメンションや指標を追加する場合には、既存の設定状況を踏まえて、統一した定義を保つことにもつながります。実装担当者によって定義が異なると、その後変更を加えた時に、意図した計測ができていない、などトラブルが発生する原因になる可能性があります。
② マーケターが分析をする上で役立つ
Adobe Analytics のデータを使って分析する際に、ディメンションや指標の定義を正確に理解しておくことは不可欠です。
Adobe Analytics には深掘り分析に便利な Workspace という機能がありますが、これは柔軟にデータを掛け合わせて結果を得られる一方で、ディメンションや指標の理解が欠けていると誤った理解に繋がってしまいます。
例えば、「閲覧した商品」というディメンションがあった場合、それが「セッションの中で最初に閲覧した商品」なのか、「セッションの中で最後に閲覧した商品」なのか、はたまた「その訪問者が最初に閲覧した商品」なのかによって分析結果として得られる考察は大きく変わってくるはずです。
分析時にSDRが手元にあれば、誤認識を防ぐことができます。
SDRの作成方法と管理方法
SDRの作成、管理にはメリットがあり、ぜひ作成しよう、と感じた方もいるかと思います。ここでは、実際にSDRを作成し、管理する方法について紹介します。
① SDRの作成方法
項目ごとにシートを作成します。
(例)
・環境変数(ドメインや文字コード、通貨単位の設定など)
・ディメンション(prop,eVar)
・イベント
・マーケティングチャネル(使用している場合)
・IPアドレス除外設定
ここからはイベントを例にとり、SDR作成の一例を紹介します。
記載しておくべき項目ごとに、列を作成します。
(例)
・取得項目
・取得変数
・取得箇所
・取得ロジック
・取得タイミング
・デバイス
各項目は実際の設定通りに記載するようにします。
「取得項目」欄には Adobe Analytics の管理画面で実際に設定している変数名を、
「取得ロジック」欄にもタグマネージャーやJavascriptコードで実装した内容を詳細に記録します。
② SDRの管理方法
SDRを作成したら、運用担当者がアクセスできる場所にファイルを格納します。
これでレポート分析するときにはいつでも計測定義の確認が可能になります。
また、追加実装をする際には忘れずに更新する必要があります。
外部に実装を依頼する場合は、あわせてSDRの更新・納品も依頼するのが望ましいです。設計の土台にもなりますから、最新のSDRは依頼先に共有すると良いです。
まとめ
今回はSDRを作成し、管理するメリットから方法まで紹介しました。
DACでは、DTMからLaunchへの移行をサポートしております。また、Adobe Analytics の導入、実装、計測設計、運用、SDR作成などのご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。お客様の現在の実装状況確認から承ります。