前編では、GA4移行における課題の振り返りと、アドビ社提供のAdobe Analytics(以下、AA)というツールのご紹介を中心に触れ、AAとGA4の機能について「①分析・レポート」を解説しました。「後編」である本記事では、引き続きAAとGA4の機能について「連携機能」「ITP対策」また「その他特徴」に分けて解説していきます。
本記事では、UAからの移行についてお悩みの方、アクセス解析ツールの新規導入を検討されている方々により適切な選択を行っていただくための一助となるよう、AAとGA4の違いについて前編・後編に分けてご紹介しています。
DACではAA、GA両方の企業資格を持っていますので、多数のサポート実績をもとに平等な立場から比較を行っていければと思います。
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AA(Adobe Analytics)と GA4の項目別比較:②連携機能
AAの特徴
◆外部データのインポートは「データソース」や「データ挿入用API」で可能
AAでWebサイトから収集したデータ以外にも「データソース」機能を使用して、外部で取得した追加のオンラインまたはオフラインデータを取り込むことが可能です。「FTP」サーバーを利用してデータファイルのインポートを行ったり、「データソースAPI」を利用してご使用のアプリケーションをプログラムでAAと連携させたりすることもできます(HTTP、SOAP、REST 経由でデータを転送可能)。また、データソース以外にもサーバーサイドの収集データをAAに送信する手段としてデータ挿入用の専用APIが用意されています。
◆「分類インポーター」「分類ルールビルダー」などの機能を使った再分類が容易
AAには計測された項目に対して、属性(分類)項目を後から付与できる「分類インポーター」と「分類ルールビルダー」が用意されています。
「分類インポーター」は属性項目の定義用ファイルをアップロードして分類する機能、「分類ルールビルダー」はツール上で計測された値を振り分けるルールを指定し、設定後は自動的に分類する機能、といった違いがあります。
こうした機能を使用すれば、製品IDやキャンペーンIDなどで計測される値を日本語に変換したり、カテゴリ化したディメンションを追加したりといったことが可能です。サイトの分析が進む中で新たな属性項目を追加したい場合なども、複雑な実装なしに任意の粒度にグループ化ができるのは非常に便利です。
◆外部連携は一部のみ可能
インポートや分類に関して優れた機能を持つ一方で、セキュリティを重視するアドビ社のポリシー上、属性情報を利用するには工夫が必要です。例えば、先程ご紹介した「データソース」などを利用して、外部データを取り込むといった方法が考えられます。その他、マイクロソフト社の「Power BI」とAAは連携が可能となっており、両者を統合することで、Microsoft Power BI 内で AAのデータを視覚化し、組織全体で簡単に共有できます。
また、前編の「AA(Adobe Analytics)について」でご紹介した通り、AAはアドビ社が提供するソリューションの一つという側面も持っています。A/Bテストやパーソナライゼーションを実施できる「Adobe Target」、データ管理プラットフォームの「Adobe Audience Manager」など、各種アドビ社の製品と連携することも可能です。
◆大容量の生データ抽出機能が用意されている
AAではレポート表示用に加工される前の生データを加工・抽出する機能があります。
「Data Warehouse」では、画面のUI上で生データに必要なフィルタリング設定を行い、CSVファイルや、BIツール「Tableau」に対応したTableau 形式(TDE)で書き出してメールやFTPサーバーに送信ができます。「データフィード」では、UI上で生データをFTPサーバーに定期配信するためのバッチ処理の設定を行うことが可能です。書き出したデータは保存ができるのはもちろん、他プラットフォームやBIツールに取り込むことで、AAで収集した情報を活用することもできます。
「Data Warehouse」の利用イメージは前編でもご紹介した以下の記事が参考になると思いますので、合わせてご覧ください。
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GA4の特徴
◆外部データのインポートは「データインポート」で可能
GA4では外部のデータを格納した CSV ファイルをプロパティにアップロードする機能「データインポート」が用意されています。オフラインのビジネスツール等から得たデータと、GA4が収集したイベントデータを結合することが可能です。
◆Google製品との強力な連携機能
GA4を利用する大きな魅力の一つとして、他のGoogle製品と連携する機能が用意されていることが挙げられます。Google製品は多岐に渡るため、ピックアップして2つご紹介いたします。
【Google 広告】
日本でも普及しているGoogle社運営のオンライン向け広告配信サービスです。
GA4プロパティとGoogle広告のアカウントを連携すると、レポート上でGoogle の広告経由でアクセスしたユーザーに関するデータを確認することができるようになります。
また、Google 広告のアカウントにGA4のコンバージョンデータのインポートを行ったり、GA4で作成したオーディエンス(ユーザリスト)をGoogle広告のリマーケティングに活用したりといったことも可能です。
【BigQuery】
Googleが提供するクラウドデータウェアハウスです。各種ツールから収集した大規模データを蓄積し、高速で処理する機能があります。GA4と連携することで、SQLによる分析、BigQuery上で管理している他のデータとの統合、Looker Studio(旧Googleデータポータル)などの可視化・BIツールを使ったビジュアリゼーションを行うといったことが可能です。
すでにGoogle系サービスを導入している企業や、他のサービスで収集したデータとのつなぎ込みをしたいといった要望がある場合は、GA4ならではのメリットを享受しやすいと言えるかと思います。
◆クッキーを利用した属性の推計データがチェック1つで利用可能
GA4では「Googleシグナル」を有効にすることで、データ収集の精度を向上させることができます。この機能を利用すると、「Googleアカウントにログイン」し「広告のカスタマイズ」をオンにしているユーザーと関連付けられたセッション であれば、別のデバイスからのアクセスであっても同一ユーザーと認識し計測できる可能性が高まります。
その他にも、性別や年齢といったユーザー属性、インタレスト カテゴリといった分析に役立つレポートが有効になるなど、Googleシグナルを前提とした機能の恩恵を受けられるメリットがあります。
ただし、Googleシグナルを有効にした場合、「Google アナリティクスの広告向け機能に関するポリシー要件」が適用されますので、承認にはリスクが伴います。適用自体は簡単ですが、気軽にONにはできない機能である点はご留意ください。
AA(Adobe Analytics)と GA4の項目別比較:③ITP対策
AAの特徴
◆Web SDKを利用して実装することで対策が可能
近年、Webブラウザではトラッキングに関する技術規制が進められており、プライバシー保護の観点から3rd パーティクッキーの利用は大きく制限を受けるようになりました。Apple社、Google社を中心に規制は年々厳しくなっており、Web上での効果測定ツールを提供している企業では何らかの対策が求められる状況となっています。
ITP(Intelligent Tracking Prevention)対策とは、こうした規制下でもターゲティング施策や効果計測を行うための代替手法を指します。アドビ社でも対策が進められており、1st パーティ クッキーによる計測だけではなく、「Web SDK(Alloy.js)」と呼ばれる新しい計測コードとPlatform Collection Edge Network(アドビ社が提供するデータネットワーク)を利用することで、クッキー規制の影響を回避できるような技術が用意されています。
GA4の特徴
◆サーバーサイドタグ設定を行うことで対策が可能
ユーザーのブラウザ上で行われていたタグの処理を、専用のサーバー(GCP)に転送して実行させる「サーバーサイドタグ」が用意されています。計測に使用するクッキーをタグではなくサーバーからセットすることができるため、導入すればITPの影響を回避してサイト解析や広告効果計測を行うことが可能になります。
ただし、設定にあたっては有償サービスであるGCPが必須になるなど注意点もありますので、詳しくは以下の記事も参考にしていただければと思います。
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AA(Adobe Analytics)と GA4の項目別比較:④その他特徴
AAの特徴
◆データの保有権は「契約企業」
アドビ社では収集したデータに関する保有権は「契約企業」に帰属するとされています。属性情報の利用ができないといった制限がある一方、AAはデータの外部利用について慎重な姿勢を取っていることがうかがえます。
プライバシー規制対応(GDPR等)や、セキュリティ面を重視する場合、収集したデータの権利がどこに帰属するかを明確に定めている点がツール選定の判断基準になることもあると思いますので、重要なポイントの一つとしてご紹介いたします。
◆ガバナンス対応用の機能も豊富
AAでは権限設定を細かく管理するための機能が用意されています。権限設定を製品単位、計測指標単位などでグルーピングが可能な他、複数ユーザーで構成されたグループ単位、個人単位など柔軟に指定して付与することができます。
自社の関係部署、社外の広告代理店など、利用者グループごとに見せるデータを制限したい場合は、データを収集しているレポートスイート(※)そのものに制限をかけることも可能です。例えば、特定の条件(例:流入区分やセグメント)で切り出した仮想レポートスイートを作成し、限られたユーザーだけにアクセス権限を付与して必要なデータのみ閲覧ができるようにするといったことも実現できます。
※:レポートスイート=データを収集し、格納する単位。GA4におけるプロパティのようなもの
GA4の特徴
◆利用料金が明確に設定されている
GA4の場合、有償版の料金体系が明確に定まっていて、都度の見積もり依頼は必要ありません。また、UA版とGA4版では料金設定に大きな違いがあり、本記事公開時点(2023年1月)での情報は以下のようになっています。
- 従来のGA360(UAプロパティ):152万/月~
- GA4有償版(GA4プロパティ):45万/月~ (年間契約となります)
※実装費は含まれません
※価格改定予定(為替レートの影響で金額変動あり)
※イベント数による従量課金となります。詳細はお問い合わせ下さい。
GA4有償版の場合、固定基本料金(2,500 万件までの月別イベント)+イベント数(2,500 万件の月別イベントから超過した分をカウント)に応じたイベントごとの変動料金が適用されます。
UA時代の旧料金体系と比較して、大幅なコストダウンが図られている点は魅力かと思います。
GA4有償版と無償版の機能面での違いについては公式ヘルプページに詳しい比較が載っています。
全体的にディメンション、イベント、BigQueryのエクスポートといったデータ収集にかかわる上限値が引き上げられている他、データの保持期限が最長14ヶ月→最長50ヶ月に延長されているといった特徴があります。
まとめ
最後に、これまでご紹介した4つのポイントについて、表形式で比較いたします。
<AA/GA4の特徴>
AA、GA4それぞれに特徴と違いがあるため、利用者側が何を重視するかによって魅力を感じる部分はかなり異なってくると考えられます。この機会に自社のマーケティング戦略上必要となるレポート内容、セキュリティポリシーといった多角的な観点から、どのツールが最適かを改めて比較、ご検討いただければと思います。
また、AA、GA4ともに非常に多彩なツールとなっており、この記事内では残念ながらご紹介しきれなかった機能も多数あります。DACではAA・GA両方の企業資格を持っていますので、フラットな観点で各ツール利用に関するご提案が可能です。ご興味がある方はぜひお気軽にご相談ください。