Dify活用事例 マーケティング戦略をサポートするAIアプリ「0次AI仮説」開発の裏側とは

 2024.11.19  髙松 美香

前回のブログでは、プログラミングの知識不要でAIアプリを開発できるDifyをご紹介しました。
今回はDifyの活用事例として、Hakuhodo DY ONEがDifyを用いて開発した、顧客分析を迅速に行うことができるAIアプリ「0次AI仮説」についてご紹介します。

「0次AI仮説」はマーケティング戦略における分析を支援するツールとして有効ですが、
なぜ「0次AI仮説」を開発したのか、マーケティング戦略・広告提案における課題から、Difyを用いてどのようにAIアプリを開発したのか、についてまとめています。

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マーケティング戦略・広告提案における課題:顧客分析

Hakuhodo DY ONEでは、さまざまなクライアントへマーケティング戦略の立案・提案から、実際の広告配信の実行・運用、その後のレポート・結果の分析まで、一貫して対応しています。

広告案件では以下の流れが一般的です。blog_Dify-usecase_フロー案件が発生したら、広告の掲載期間や予算、目的や目標(CVポイントやKPI)などの与件を整理し、クライアントが扱う商品の特徴や、市場や競合企業に関する調査をすることでクライアントへの理解を深め、どういった戦略を打つべきかを検討して、課題やニーズに沿った提案を行います。

こうした流れの中で重要となるのが、クライアントに関する情報収集と分析、つまり商品理解・市場理解・顧客理解です。
近年の市場環境は急速に変化し、クライアントのニーズも多様化しています。クライアントへの提供価値をさらに高めるには、クライアントのニーズを的確に捉え最適な提案を行うための分析力が求められます。

しかし、こうした分析を行うためには、膨大な情報から必要な情報を収集し、さまざまなマーケティングフレームワークを使用して情報を整理して分析する、という作業が必要となりますが、
分析を行うにあたっては担当者ごとの経験や知識に依存する部分が大きく、質やスピードにばらつきが生じるという課題があります。

AIアプリ「0次AI仮説」の開発:顧客分析の質向上を支援

上記のような課題を解決するためHakuhodo DY ONEでは、簡単にAIアプリを開発できるローコードプラットフォーム・Difyを活用し、AIアプリ「0次AI仮説」を開発しました。

「0次AI仮説」とは、少ない入力で複数のマーケティングフレームワークを活用し、商品理解や市場理解、顧客理解を迅速に行うためのAIアプリです。
このアプリは、新規サービスのターゲットや競合情報などの基本情報を入力するだけで、3C分析やSWOT分析などの主要なマーケティングフレームワークに沿った分析結果をAIが生成します。

blog_Dify-usecase_AIアプリキャプチャ(画像)「0次AI仮説」がDMPツール「AudienceOne®」のSWOT分析結果を生成した内容

このAIアプリを活用することで、経験の有無にかかわらず誰もが短時間で質の高い分析結果を得られるようになり、戦略立案に必要な情報を整理し多角的な思考を支援するツールとして社内で評価されています。

AIアプリ開発の裏側:Difyで本当に”簡単に”開発できるのか?

では、Difyを活用したAIアプリ開発はどのように進められたのでしょうか?
開発者は、マーケティング業務のBPR*推進を担当するSさんです。
*BPR:Business Process Re-engineeringの略語、業務プロセスなどを見直して再構築を図ること

Sさんは、ChatGPTをはじめとするAI活用経験が豊富で、プライベートでも新しい生成AIツールを試したり、インターネットで情報収集を行うなど、常に新しい動向をキャッチしています。ただし、プログラミングの経験はありません

SさんにDifyでの開発経験についてインタビューしてみました。

― Difyを実際に使用してみた感想をお聞かせください。特に、自分の分析フローをアプリ化する上での使いやすさはいかがでしたか?

「まさにイメージ通りでした。ブロックを積み上げていく操作が直感的で、自分が思い描いていた処理の流れをそのまま表現できました。また、AIが多少曖昧な指示でも処理してくれる点は、プログラミング未経験の私にとって大きなハードルを下げてくれました。一方で、AIへのプロンプト指示にはある程度慣れておいた方が、より精度の高い結果を得られると感じています。」

blog_Dify-usecase_Dify管理画面キャプチャ(画像)DifyのAIアプリ「0次AI仮説」の開発画面
四角枠のブロックに指示内容を入力し、それらを線でつないでプログラムしていく

― Difyのどの機能が特に役立ちましたか?

「特に役立った機能は、『並列処理』です。複数のマーケティングフレームワークによる分析を同時に実行することで、短時間で分析結果を得ることができました。また、『Webスクレイピング機能』も、必要な情報を効率的に収集するのに役立ちました。」

― 開発で工夫した点はありますか?

「一番工夫した点は、ユーザーにとっての入力の手間を最小限にすることです。普段行わない作業をAIに任せるわけですから、アプリはとにかくシンプルで使いやすくする必要があると考えました。そのため、入力項目を必要最低限に絞り込み、誰でも簡単に操作できるように意識しました。」

このようにSさんは、Difyの直感的なインターフェース、豊富な機能を活用することで、
わずか約3日で初期バージョンの「0次AI仮説」を開発しました。

Difyの強みは、アプリ開発が容易なだけでなく、開発したアプリを簡単に展開し、ユーザーからのフィードバックを迅速に収集できる点にもあります。これにより、企画からローンチまでを短期間で実現し、現場のニーズに即座に対応することができました。
「0次AI仮説」も、開発後すぐにトライアルとして一部のユーザーへ展開され、ユーザーから出たフィードバックをもとに、さらなる機能改善が行われました。

まとめ:AIアプリがもたらす業務革新

Difyで開発した「0次AI仮説」は、トライアルを経て、現在社内で公開されています。

blog_Dify-usecase_社内リリース(画像)社内で公開されているAIアプリの一覧画面

トライアルでは、フレームワークを網羅した分析結果が数分で得られる点が評価されましたが、本アプリの主な効果は作業時間の短縮ではなく、マーケティング戦略の思考支援にあります。
実際に利用した担当者からは、「AIの分析結果が、戦略立案時に非常に参考になった」といった声が聞かれています。
Hakuhodo DY ONEでは現在、クライアントへ広告提案を行うフロント業務の強化を推進しており、「0次AI仮説」もその戦略の一環として活用を促進しています。将来的には、このアプリをもとに、案件管理業務を包括的に支援する仕組み作りを視野に入れています。

こうした活用事例から、Difyは単なる業務効率化ツールにとどまらず、社員のスキル向上や会社全体のサービス品質向上にもつながる可能性を秘めていると言えるでしょう。

Hakuhodo DY ONEは、Difyを活用することで、マーケティング業務の質的向上を実現しており、社内だけでなく、企業様へのDifyおよび生成AI活用支援サービスも提供しています。

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またHakuhodo DY ONEでは、デジタル広告やマーケティングに向き合う企業の事業変革を支援する事業支援コンサルティングを展開しており、
実際に生成AIを使いながらAIを業務に定着させるご支援も行っていますので、AI導入やAI活用に課題をお持ちの方はぜひお問い合わせください。

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この記事の執筆者

髙松 美香

2022年に中途入社し、新規事業領域のアプリ開発に携わる。2024年度からは生成AIを活用し、社内業務効率化を推進するプロジェクトに従事している。

2022年に中途入社し、新規事業領域のアプリ開発に携わる...

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