2016年7月5日にプレスリリースした、技研商事インターナショナル様(以下、技研商事)との取組みについてご紹介します。
そもそも「エリアマーケティング・商圏分析」ってどういうもの?というところから、技研商事が提供するMarketAnalyzer™(マーケットアナライザー)とAudienceOne®が連携すると何が出来るようになるの?というのを、技研商事の市川 史祥様に詳しく解説いただきました。
左:技研商事インターナショナル 市川様
はじめに、御社について教えて下さい。
市川:弊社は『エリアマーケティング・商圏分析』というキーワードに特化した会社です。その事業1本でやっています。クライアントとしては、多店舗展開するようなチェーン企業が多いですね。大きな店舗ですとショッピングセンター、小さな店舗ですとコンビニ、飲食チェーンといったところです。
御社は創業されてからずっと「エリアマーケティング・商圏分析」を軸に事業をやられているのでしょうか?
市川:いえ、創業自体は1976年なのでもう40年になるのですが、この商圏分析・エリアマーケティングというのは直近の約20年になります。最初は社名にも「商事」とあるように、商社としてスタートしました。また「インターナショナル」は海外の優れたものを日本に持ってきて売ろう、という意図があるようです。ただ右から左に持ってくるだけでは大手さんにも出来てしまうし、それでは技研商事の意味はない、ということで、海外から持ってくるのだけれども、付加価値をつけてオンリーワンにして国内に展開する、というDNAは昔からあります。
「エリアマーケティング・商圏分析」のソリューションもベースは海外、ということでしょうか?
市川:はい、そうですね。20年前の当時、国内にはエリアマーケティングのツールはありませんでしたので、先駆けとなるべくアメリカの企業と技術連携しました。地図システムとエンジンの技術を導入して、自社の技術部隊で日本の市場に合うような機能やデータを付加してサービス提供をしているのが、現在のMarketAnalyzer™(マーケットアナライザー)です。
MarketAnalyzer™は、エリアマーケティング・商圏分析専用のGIS(地図情報システム)で、現在2,000社以上 ※1 の企業に導入いただいています。主な特長としては3点、
- ①地図上に統計データを重ね、店舗商圏のマーケットボリュームやターゲット分布を瞬時に把握可能
- ②エリア毎の居住者属性のクラスターを知ることができる「居住者プロファイリングデータ」を保有
- ③顧客データや、広告のレスポンスデータと重ねあわせることが可能
といったものがあります。
先ほどもお伝えした通り、利用企業としてはB2C向けに「店舗」という軸で展開している企業が最も多くなっています。店舗開発部署や該当業務を持っている方が、新しく店舗を出そうとする際にご活用されています。※1:2016年6月末現在
店舗出店に際しての事前調査に活用いただいている、ということでしょうか。
市川:そうですね。企業は、店舗出店に際して事前に「市場性があるのか?」を調査する必要があります。ただ、手作業だとなかなか難しいですし、経験と勘だけでは心もとない。きちんとデータ(エビデンス)に基づいた意思決定をする必要がある、ということで弊社のソリューションをご活用いただいています。一方でそういったチェーン企業は「いかに既存店を活性化させるか?」というミッションも持っていますので、来店誘導の“販促”というシーンでも活用されています。
“販促”ではどのような活用方法になるのでしょうか?
市川:地域に紐づく販促というと、折り込み広告やポスティング、場合によっては看板という選択肢が一般的です。弊社のソリューション「MarketAnalyzer™」を活用いただきますと、何丁目や郵便番号という単位で人口は何人?という商圏が見えてきますので、それぞれの販促施策を行う際にデータを見て「ここに絞って実施すると、最もROI(費用対効果)が上がりそうだね」といった分析が可能です。
他にはどのような導入企業がいらっしゃいますか?
市川:次の顧客層として多いのは、そういった実店舗をターゲットとする消費財メーカーでしょうか。食品や化粧品、家電といった企業が挙げられます。そのような企業は、自社の商品をいかに小売店さんに置いてもらって売ってもらうか?が重要です。従来の、営業の人が店長と仲良くなって商品を置いてもらうというやり方ではなく、「店長、あなたの商圏はこのようになっています。20代の女性が会社帰りに立ち寄る向が強い商圏です。だからうちの化粧品は相性がよいですよ。新商品の棚割りプラン、プロモーション提案書を持ってきました!」といったような、提案の根拠となる営業ツールとして活用いただいています。
導入企業の得意先への提案材料として活用しているのですね。
市川:はい。クライアントに提案するという意味では、広告代理店もコンサル会社もそうですし、ポスティング代理店も折り込み会社も、あと例えば建築会社やハウスメーカーでも活用されていますね。業種・業態問わず、いろいろな分野で出店や集客のための提案ツールという軸で活用頂いています。
また、我々がお客さんから評価される軸には、単純に商品の良し悪しだけではなく「それを使ってどうするのか?」という運用コンサルティング能力もあります。ですので、弊社のメンバーはソフトウェアを売って終わりではなく、それをどのように使うか?という支援もナレッジを持って担当しています。ほとんどが直販なのでお客さんのニーズは常に把握しており、新しい機能やデータは常に進化し続けています。自社でサービス開発を行っているので、場合によってはクライアントごとにカスタマイズを行い提供しています。
MarketAnalyzer™の特長の1つとして「居住者プロファイリングデータ」があるかと思いますが、改めてなぜこのデータを見ていく必要があるのか解説いただけますか?
市川:“地域をデータで読み解く”という際に、そもそも地域ごとに商圏特性が異なるのでそれを可視化する必要があるからです。具体的な例でご紹介します。
例えば、東京都内から「豊洲」「高田馬場」「高島平」の3ヵ所をピックアップし、それぞれの駅前商圏を見てみます。データを見ると、豊洲は『30代・40代のお母さんと子どもたちが多く、ニューファミリー中心』という印象です。
一方で高田馬場は、親子関係はあまり認められないが、30・40代ではなく20代前半の若者が多く『学生・新社会人の一人暮らしが多い』という様子がうかがえます。
高島平においては、シニア層が多くを占めている状況です。
3ヵ所とも同じ都内ではありますが、居住者層が全く違いますね。
市川:はい。ですから、同じ施策を行ったとしても全く反応が違うだろう、ということがこの情報だけでも分かるかと思います。また「1人暮らしの20代」といってもいろいろな人がいます。賃貸なのか持家なのか、場合によっては富裕度とか消費傾向が必要だ、ということでプロファイリングデータというものが必要になってきた、という背景があります。
MarketAnalyzer™に搭載している居住者プロファイリングデータは、日本全国を30分類しています。これは“国勢調査”という国で行っている調査・統計データを活用して作成をしています。この調査には「年齢」「家族構成」「どういう家に住んでいるか」「職業」など全部で60目あります。ただ60項目を人間が見ても複眼的に判断できないので、ぎゅっと縮めて9つの要素にしており、それを因子と呼んでいます。
この因子の数値偏差を見ていくと様々な波形パターンのものが出てきますので、そのうち同じような波形グループをまとめて出来たのがこの30分類です。統計的にその30分類を見れば60項目見たことになりますよ、という話です。
※さまざまな波形パターンを特長毎に30分類に集約
このような地域のボリューム、年齢、家族構成だけではなく「質」を加味したデータ分析はますます必要ですよね、そんなご案内をしています。
今回、MarketAnalyzer™とDACにて提供しているDMP「AudienceOne®」との連携が発表となりましたが、今回の連携により何が実現できるようになるのでしょうか?
玉村:1番大きなポイントは、従来、MarketAnalyzer™などのツールを活用し商圏を分析し、実施される広告は、新聞折込広告やダイレクトメールだったわけですが、新たにオンライン広告が可能になったということです。これにより、例えば新聞折込では難しくなった若年層に対し、スマートフォン広告で商品を訴求する、店舗誘引するなど可能になります。
5月にも1度リリースをさせていただいているのですが、その際はAudienceOne®の居住地判定が郵便番号レベルで可能になり、接続するDSP「MarketOne®」にて郵便番号ターゲティング配信が可能になったというリリースでした※2。今回はさらにMarketAnalyzer™と郵便番号を“キー”に連携することで、ターゲットエリア選定につき高度なプランニングが可能になった、オンライン広告配信までをワンストップに実施ができるようになった、ということです。
AudienceOne® 郵便番号に対応※2:前回のリリース
オフラインメディアで行っていたようなセグメンメンテーション手法を、オンラインでも実施することが可能になった、ということでしょうか。
市川:はい。リアル店舗への誘導施策として、店舗の商圏といった狭小エリア単位のセグメントへのリーチ手段は新聞折り込み広告や無宛名DMといったオフライン施策に限られており、このようなオフライン施策ではリーチがしづらい層、特に若年層へのアプローチには課題がありました。今回の連携で従来のセグメントを活用したうえで、リーチしづらかった20代・30代に対して効率的に商品訴求が可能となります。既存のMarketAnalyzer™導入企業に対しても新しい価値が提供できるようになったと考えています。
具体的にはどのような形での活用が出来るのでしょうか?
市川:1番基本的な配信方法は、店舗の商圏エリアとなる場所の居住者への配信ですね。自動車10分圏内とか、電車で30分圏内という形でセグメントを分けることが可能ですので、ターゲットとする商圏に対して対象者を抽出し、広告を配信することができます。また、新築の分譲マンションを販売したい、といったケースにおいては、過去の購入履歴などの情報から、購買可能性の高い路線沿線を抽出し、そのエリアに該当する居住者に絞って配信することが可能です。
DAC:応用的な活用方法ですと、富裕層ターゲティングなども可能です。エリア情報は人それぞれの経験による勘がはたらきますが、データを活用するとより多くのことがわかります。富裕層が多く住むエリアとして「六本木」「麻布」「芦屋」を思いついたとしても、その3つのエリア以上に富裕層世帯率の高い「佐賀の大字牛屋」「横浜の新吉田町」を言い当てられる人は少ないでしょう。データを使えば、富裕層世帯率の高い郵便番号エリアを全国から瞬時に抽出し、そのエリアの居住者に対し広告を配信することが可能です。このような活用方法は、ラグジュアリー、外車、高級不動産など高額商品を提供するブランド広告主の出稿ニーズにも応えられると考えています。
今後の展開について教えて下さい。
玉村:今後は今回の連携を機に、積極的に商品開発を進めていきたいと考えています。技研商事さんがお持ちの「居住者プロファイリングデータ」の30分類とDACのオンラインデータを掛け合わせ、商品価値やニーズが高いものをパッケージとして提供していくことで、より活用いただきやすい環境をつくっていければ、と思います。
市川:MarketAnalyzer™では、今「15:都会のセレブ」といっていますが、車に関するプロファイリングデータであれば、「15:外車のスポーツカー」や、「22:ミニバン、週末BBQ」などの形で商品開発をしてもよいかもしれませんね。新しいデータが加わることでまた分類が変わるかもしれません。この居住者プロファイリングデータも自社開発ですので、30分類が粗ければ50分類作りましょうか、ということも可能ですので、ニーズに合わせて検討していければと思います。
DAC:今回、GIS業界(地理情報システム)の技研商事さんと、広告業界のDACがコラボし本商品の実現に至ったわけですが、今後も、様々な異業種の方々と「データ」を共通言語として対話していくことで、今まで考えもつかなかったような新たな広告商品、データ商品を開発していきたいと考えています。ご期待ください。
市川様、ありがとうございました。
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