DACのパートナー企業をインタビュー形式でご紹介しているシリーズ。3回目の今回は、データを活用して会社を変革したい企業様を支援している株式会社ブレインパッド(以下、ブレインパッド)です。データ活用のリーディングカンパニーとして、Rtoasterの提供のほか、様々な形で企業を支援しているブレインパッドの上川 晃二朗様に、データやAIの活用に関するトレンドや効果的にデータをマーケティングに活かすポイントについて、お話を伺いました。
まずは御社についてお伺いさせてください。
弊社は創業来 「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」というミッションを掲げ、データ活用や分析を主軸にサービスを展開しています。2019年3月18日でちょうど15周年を迎えました。よく言われるようなことでもありますが、課題認識として、データの流通量が2025年には163ゼタバイト(ゼタ(Z):10の21乗)という、あまり聞かないような単位になっていくと言われています。しかし、そのうち分析されていない手つかずのデータが85%ほどあり、12%は分析可能ではあるけれども利用されていない、つまり97%がデータとして全く利用されていない、と言われています。現時点では残りのわずか3%しかデータの活用がされていないところに対して、課題意識を常に持ちながらビジネスを展開しています。
事業としてはどのような内容を展開されているのでしょうか。
アナリティクスとエンジニアリングを駆使した3つの事業があります。1つ目は現在80名を超えるデータサイエンティストによるデータ解析/コンサルテーションや、データ解析ロジックを組み込んだシステム実装を、業務受託型で行う「アナリティクス事業」です。2つ目は、データを活用したCRM改善やマーケティングを自動化する場合に必要となる海外製システムや、機械学習による予測システムのライセンス販売と、ビッグデータ分析環境の構築を行う「ソリューション事業」、そして3つ目が、私が所属している「マーケティングプラットフォーム事業」です。
この事業では、デジタルマーケティング領域において、レコメンドアルゴリズムや自然言語処理機能などを搭載した独自性の強い製品を自社開発し、SaaS形式でお客様に提供しています。近年は「運用型広告領域」の新サービス・新製品の開発も行っています。製品群の中では、御社のAudienceOne®やDialogOne®との連携に注力・強化しているレコメンドエンジン搭載プライベートDMP「Rtoaster」を主軸に提供しています。
この3つの事業を融合させたブレインパッドの総合的なソリューションをうまく活用することで、お客様と一緒にビジネス創造にも取り組んでいます。これまでデータ活用を支援したお客様は業種問わず800社を超えています。またこれらとは別に、AI・データ分析を起点としたビジネスのデジタルトランスフォーメーションを支援する部門もあり、外資系のコンサルティング企業出身のメンバーや各部門から選抜したメンバーがビジネスを展開しています。
御社は長らく企業のデータ活用を支援されていらっしゃるので、様々な相談が舞い込んできているかと思いますが、今トレンドとしてはどのような状況でしょうか。
今のトレンドだと、大小様々な企業でデータやAI活用によって「ビジネス自体をどう変化させるのか」、あるいは「ビジネスをどう創っていけるのか」などの、業務改善やデジタルトランスフォーメーションの領域でご相談を頂く機会が増えてきていると感じています。データ分析や活用などを広く捉えたトレンドだと個人的には思っています。
弊社のコーポレートサイトとは別に「+AI(プラスエーアイ)」というサイトで情報発信をしています。詳しくはぜひそちらをご覧ください。
様々な取り組みをされているんですね。では、マーケティング領域に絞るといかがでしょうか。
マーケティング領域のトレンド(ニーズ)では、以前から言われている統合マーケティングを実際に実行し始めている状況かと思います。最適なデータを収集・統合し、マルチチャネルでの施策へ活用する・したいというニーズは以前よりも本格的に高まってきているかと思います。
こういった状況からお客様は「各チャネルは消費者と企業間におけるコミュニケーション手段」として顧客体験をどのように向上・改善していくのかを重要視されています。その中でも特に顧客インサイトの重要性がキーワードとして挙げられると思います。
逆にお伺いしたいのですが、貴社(DAC)ではどういうトレンドと思われていますか?
まさに同じような印象を持っています。以前からから言われている印象はありますが、例えば統合マーケティング実行の為に MA(マーケティング・オートメーション) が一時期流行ってから一巡したところで、導入してみたけどうまくいかないというケースが増えてきている状況とも感じています。
そうですね。ハイプ・サイクルで言う幻滅期を少し過ぎて、一般化されてきているフェーズに来ているのかなと思っていて、バズワードはどんどん出てきていますが“やりたいことは一緒”というサイクルが繰り返されていると思います。その中で注目されているのがやはり、データ活用やAIなどの技術だと思います。
「データを活用したい」と考えられている方は増えてきていると思いますが、とはいえどう取り組んだらいいか迷われている方も多いと思います。取り組みのスタートとしては、まずはどのようなアドバイスをされますか?
重要なのは「仮説を立ててすぐに実行(アクション)に繋げる」ということをお伝えしています。これは、Rtoasterのサービスを提供し始めてからずっとお伝えしているポイントです。
お客様のデータを活用したいというニーズがあって、その為に活用しやすいようにデータを収集・統合する DMP という概念が出てきました。もちろん、まずはデータを収集・統合する事も重要ですが、「仮説を立ててすぐに小さな施策でも良いので実行してみる事」がデータ活用のスタートとしてはとても良いと考えています。なぜなら、今後データを活用する上で、必ず分析や施策を常に実行していく事になるので、アクションする前に仮説・目的を持って分析や施策に取り組む癖を付けることがデータ活用において重要だからです。
また、データ活用という側面では、基本的には「再現性を持たせること」だと思います。例えば、線形の流れになっている結果に対して原因を推察していくのは人間が考えるべき事だと思っています。右肩上がりの部分に対して再現性を持たせながらそのままに右肩上がりにする事や、もしくは下がる傾向の時には、仮説をベースに原因を特定して再現させないようにするなど、データと上手く付き合いながら結果を解釈するという基礎的な部分を積み上げていく事も重要だと思います。
原因解明でいうと上手くいかないときに注目が集まりがちですが、上手くいっている時だからこそ要因をしっかりつかんで再現性を高めていく、ということですね。
はい。ただ、世の中には、「何に使うか決まっていないが、データは資産なので溜めたい」といった傾向もあると思っています。そういった場合でもただ溜めるのではなく、シンプルにデータを見た時に、どんなアクションに繋げられそうかな、という仮説・目的のところも必ずセットで考えて、計画に落とし込んでいくのが重要だと思います。
視点を変えてみたいと思うのですが、例えば組織においてトップダウンで DMP を導入して最適化する業務を与えられたけれども、何のためにやるのか見当がつかない、そもそも何を考えたらいいかわからない、という担当者もいるかと思います。そのような場合ですと、どのようなコミュニケーションをとっていらっしゃいますか?
トップダウンの場合、抽象的ではありますが、『ビジネスを良くしよう』『収益を向上させよう』という題目があるかと思います。経営者はそういう目線でいいと思いますが、現実問題、例えば、分散したデータを統合できるかと言うと、ブラウザIDは紐付けられないといった技術的な壁があったりします。その事実をトップに伝えることが重要です。また、データ活用のためのアクションについても、結果のフィードバックも含めて社内共有していただく必要があると話すことがあります。
要するに「データはデータで溜めましょう。ただし現実として技術的にここまでしかできないけれども、この部分は何らかファクト設定を持ちながら作業ができるよ」という事を社内で共有していく。社内で承認を得るためでもありますし、アイディアを出すためでもこのようなアプローチで分析結果を見せるところまでを支援しています。昨今さまざまなツールが出てきている中で、弊社の場合は逆にそういう人的な側面を支援することも可能なので、我々の市場価値が高まってきていると感じています。
お客様には、仮説・目的を立ててデータを整理して、最終的にアクションを決めて実行し、その結果を社内に共有する事が重要であるとお伝えしています。データを使って顧客とのコミュニケーション施策の最適化だけではなく、コミュニケーションを通じて自社の製品自体を考え直すことや、企画を練り直す、MD(マーチャンダイジング)に活かす、などのマーケティング領域以外のデータ活用についても一緒に考えています。結局ゴールをどこに設定するかの支援をする事が最近では多いように思います。
マーケティングにとどまらず、踏み込んでコミュニケーションされているのですね。
そうですね。個人的な印象では、人的な支援やプロフェッショナルサービスにおいて、最近では、お客様が求められるレベル感がだいぶ高度になってきて、領域も広がって、技術やツールも進化しているので、大変だなーって思いますね。僕も昔はお客様のRtoaster活用支援を行っていたのでよくわかります(笑)
そうですよね。どうしたらいいかわからないとおっしゃっている方がいる一方で、ご担当者の中にはプロフェッショナルな知識やノウハウをお持ちの方がすごく増えてきている印象があります。
ツール選定におけるお客様の目は肥えてきていると思います。加えて、専門的な用語や活用事例もすごく知っている方が増えてきています。その一方で、お客様サイドで施策実行の為の人的リソースが不足している状況がよくあります。このような状況下では、我々のようなベンダーや業務委託などのニーズが結構あると思います。
そんな中でレコメンドエンジン搭載プライベートDMP「Rtoaster」の状況についてお伺いしたいのですが、実際に検討される方はどのようなニーズを持たれた方が多いのでしょうか?
Rtoaster を指名していただくケースでいうと、昔からレコメンド、今はパーソナライズと表現していますが、例えばマーケティング領域では、マーケティング施策に最適なデータの収集・蓄積とそれらのデータを活用し、マルチチャネルで顧客とのコミュニケーションをパーソナライズしていきたい、という時に、名前を挙げていただくことが多いと思います。
レコメンドエンジン搭載プライベートDMP「Rtoaster」と比較されるツールはどんなところが多いですか。
パーソナライズアクションに強みを持っていることもあってか、プライベートDMPで比較されることはあまりないです。Rtoasterは「データを溜める側面」「分析する側面」「パーソナライズする側面」をそれぞれ組み合わせて活用されるケースがほとんどなので、他社ツールと比較するものさしが違うと考えています。特に DMP の領域では、例えば AudienceOne® と Rtoaster を比較するにしても、全然別物なので分けて考えた方が良いですよ、というお話はお客様にさせていただいています。
今はお客様自身でプライベートDMP/パブリックDMP、1stパーティデータ/3rdパーティデータの切り分けができているケースが増えてきているので、「DMP」を比較するのではなく複数を組み合わせていくものとして捉え、その中でパッケージのサービスを活用する時もあれば、BigQueryやAWS、RedShiftなどにデータを統合化しつつ、パーソナライズして各チャネルでアクションするために他社のツールを組み合わせて活用するというイメージがもたれつつあるのかなと感じています。
ツールを組み合わせた活用イメージもコンサルテーションされているのですか?
そうですね。弊社はフラットな立ち位置なので、お客様の状況として、既に活用しているツールがあって、このツールとこう組み合わせたいというニーズがあった際、「こういう連携を実現することで、御社の課題を解決しそうですね」と、一緒に整理しながら進めさせていただくケースが結構あります。
例えば、SMC(Salesforce Marketing Cloud)を主軸に据えながらその中でメッセージングしていく部分をどうパーソナライズしていくかという時、Rtotaster からデータを連携するというケースもありますし、手法はお客様によって異なってきます。お客様にとって価値が出るか成果に繋がるかといった観点でコンサルテーションさせていただいた方が建設的だと考えています。複数のツールを連携し、組み合わせる事でシナジーが発揮できるのであればそういった方向でコミュニケーションをさせていただいています。
相談を受ける側としては大変ですが、企業としては心強いですね。
Rtoasterの強みでいうと、さきほどの話にあった「パーソナライズ」ということになりますでしょうか。
そうですね。基本的にはマルチチャネルでパーソナライズしていく、というところを実現できるのがRtoasterの強みだと思っています。その中で特に強い領域で言うと基本的にはオウンドメディアやECサイト、スマートフォン、アプリのパーソナライズが一番優れているところです。パーソナライズをするにあたってお客様のデジタルサービス上で顧客の興味関心が一番蓄積されているサイトでかつインパクトがあるデータを活用し、どのチャネルでアクションしていくか、というのを繋ぎ合わせていくことが多いですね。
ただ、先程お伝えしたようなお客様のご要望として、「簡単でもいいからパーソナライズしていきたい」というニーズがあるので、DialogOne®との連携によって LINE向けの配信でパーソナライズを実現していくというところは1つあります。あとは、Rtoasterでは個人情報を取得していないので、メール施策では基本的には別のシステムと連携しています。顧客とのコミュニケーションをどのようにパーソナライズしていくかというテーマの中で使っていただきやすいのがRtoasterなのかなと思っています。
Rtoasterをよりマーケター目線で表現すると、マーケター(マーケティング担当者)が戦略的にこういうターゲットを狙っていきたいという時に、マーケター自身がRtoaster上の管理画面から恣意的に戦略的に顧客をセグメンテーションしてターゲティング出来るのが一つ目の側面です。もう一つの側面は、旧来からの「あなたにオススメ」とか「これを見た人は~」みたいなマシンラーニングを使ったパーソナライズや、お客様独自のデータを使ったパーソナライズデータを作っていく、という取り組みを実施するケースが増えています。
前者は大きくはマーケターが恣意的にマルチチャネルでアクションをしていくための側面、後者は「商品数や記事がたくさんあります」とか「組み合わせがすごくあります」という状態でパーソナライズするには人の手には負えない場合にマシンラーニングや多様なアルゴリズムを活用する側面、この2つの側面においてマーケターの考えやアイディア、仮説をすぐに実行しすいツールとしてRtoasterを提供しています。
Rtoasterを使ってデータを活用していく際、最初の取り組みとしてお勧めしているのはどういった使い方になりますか?
本来的にお勧めしたいのは、前述の通り「仮説を立ててすぐに実行(アクション)に繋げる」という事ですが、「アクションにどう繋げるか」という中で、最初に陥りがちなのが、事前に設計しすぎてしまうというケースです。設計に3ヶ月とか半年かかってしまうケースもあります。
もちろん、設計することは間違いではありません。ただ実際にRtoasterでは(タグを)入れたタイミングからアクションに落とし込む事が可能なので、設計も行いつつもまずはアクションした結果に基づいて、仮説を立て施策を実行していく、ということお勧めしたいですね。
ただ、なかなか仮説が立てられなかったり、自社の顧客像がわからないという事もあるかと思います。そういった場合は、Rtoasterでは簡単に顧客の状況に応じた分類を行う事ができます。自動で顧客をクラスタリングする機能を持っているので、クラスタリングされた顧客に対して、まずアクションをしましょう。」という事も可能です。
あとは「こういうビジネス制約があるからこういう人にはこういうものは出したくない」とか、「マシンラーニングに任せたいが、やっぱり制約が生じてしまう」みたいな部分で、すごく精緻にパーソナライズしたいというケースも多くあります。こういったケースでもRtoasterは精緻にチューニングする事が可能です。ただ課題解決の為や目的達成の為にどうバランスを取ってもらうか、という観点は必要です。
弊社は、ツールに任せたいというご要望にも、あるいは、ツールと我々のサービス・分析をうまく組み合わせたいというご要望のどちらでもお客様が実現したい事を主軸に取り組むことが可能です。
ツールに任せられない場合は、きちんと人でフォローしつつ順番にやっていきましょうということですね。
業種業態に応じてツールには任せられない部分でどう人がフォローしていくかのノウハウが弊社では一番溜まっていると思っています。実はそこが「価値としてもっとアピールして良い部分」なのかなとも思っています。
今後の展開について教えてください。
御社(DAC)との取り組みという観点では、2つの方向性で進めています。1つはAudienceOne®との連携強化です。これによって「顧客の理解」を深め、チャネル横断のアクションを実現していくためのデータ連携の強化や分析サービスの共同開発をしていければと考えています。もう1つはさきほどもお話をさせていただきましたが、DialogOne®との連携による、LINE上でのパーソナライズの強化ですね。AudienceOne®、DialogOne® とは、こういった方向性で考えています。
今後の展望としては、結局のところお客様にどう寄り添っていくのか、お客様の成果をどう向上していくのかだと思っています。その為に弊社のRtoasterを日々アップデートしていますが、それだけに固執しすぎず、他社サービスも組み合わせてシナジーを発揮し、お客様であるマーケターをどう支援していくかが重要だと考えています。これは弊社のビジネスの方向性というよりかは、思想と言えるものだと思います。
AIやツールをスクラッチで作ってご提供することや、汎用的な技術やフレームワークを活用していく等、そういう組み合わせでお客様における成果を最大化していきたいです。
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