※株式会社ランドスケイプは、2022年7月にユーソナー株式会社に社名変更しましたが、本ブログでは記事公開時点(2022年2月)の社名で記載されております。
今回から複数回にわたって、DACのパートナー企業へのインタビュー記事をご紹介します。
第1回目は、AudienceOne®データエクスチェンジのパートナーとしても参画いただいているランドスケイプ。日本最大級の「企業データ」を持ち、日ごろから様々な企業のBtoBマーケティングを支援しているランドスケイプの吉川 大基様に、BtoBマーケティングを実践するうえで重要となるABMの考え方・具体的な取り組み方について、お話を伺いました。
また、BtoB企業向けのマーケティングにおけるデータ活用については、以下の資料の中で詳しくご紹介しています。ぜひご一読ください。
まずは御社についてお伺いさせてください
ランドスケイプは、独自構築した日本最大級のデータベースを活用し、企業の顧客開拓や育成を支援するデータベースマーケティング事業を行なっている企業です。豊富なデータベースを保有しているため、業種・業態を問わず、企業のマーケティング活動に合わせ、戦略立案が可能です。創業者の福富は、1990年以前にカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)の社長室長で、年代・性別問わず市場を俯瞰したマーケティングを支援したい、とランドスケイプを設立しました。
今はどのような事業を展開されているのでしょうか
大きく2つありまして「企業のデータベース」と、「個人のデータベース」の事業です。取り組みとしては、さきほどお話した背景もあり個人のデータの方が先でした。
1990年にDMやテレマーケティングを支援するデータベースマーケティング事業を開始し、その後、2000年にデータ管理会社の米国アクシオム社との業務提携(※1)をきっかけに法人データの収集を強化し、データを統合整備する事業をスタートしています。
データ統合するために必要な辞書(リファレンス)になる企業データは「LBC(Linkage Business Code)」と呼んでいて、上場企業から中小企業の各事業所も含めて日本最大級の820万拠点を保有し、常にメンテナンスを行なうことで、情報の鮮度を維持しています。この「LBC」を活用して、クライアント企業が持つ顧客データの名寄せや業種や売上規模などの属性情報を付与するサービスの提供や、データに基づいた戦略提供などを行なえるABMツール「uSonar®」の開発にも精力的に取り組んでいき、事業を拡大してきました。
※1:2000年12月29日リリース:アクシオム・ジャパン、ランドスケイプ社と資本提携
図:企業データ『LBC』(Linkage Business Code)
属性情報を付与するメリットは何でしょうか?
この「LBC」には、属性情報として事業所と本社の関係や、子会社と親会社など企業の資本関係が分かる企業系列の情報も入っています。この系列情報から、この事業所の本社はどこにあり、その本社の親会社や子会社はどの会社だ、ということが一目で分かるようになります。LBCを活用いただくことで、企業は新規開拓をする際に、企業グループごとの攻略がしやすくなります。
また展示会やセミナーなどで収集したリード情報に、『業種』や『売上規模』などの属性情報をつけることで、マーケティング先などの「優先順位」がつけられるようになります。ここで繋がってくるのが、昨今、BtoBマーケティングにおいて注目されている「アカウントベースドマーケティング(以下、ABM)」という考え方です。
ABMとは、取引先データ・リード情報・未開拓データを統合し、アプローチすべき企業特性を持つターゲット企業(アカウント)を選定して、売上最大化のために優先的にアプローチを行う戦略的マーケティングの手法を指しています。ABMは、比較的新しい言葉ですが、ランドスケイプが創業当初から支援している内容と変わりません。
ABMの実践においては、『役職』や『部署名』、『行動履歴』はもちろん重要です。一方で、大きな売上に繋がった企業の傾向を分析してみると、事業所数が多い会社だったり、従業者数が多かったり、もしくは工場がある等の傾向が企業ごとにあったりします。属性を付与した結果、そのような傾向が分かるのであれば、その傾向とよく似ている企業にアプローチした方が、効率がよくなりますよね。ですので、弊社のデータベースで一回名寄せするだけでなく、属性を付与して、売り上げに繋がりやすい企業の傾向と似た企業を特定してマーケティングしていくことをお勧めしています。
ただ、注意したほうがよい点があります。従来、マーケティング担当者が営業マンに引き渡すリード情報は、既に営業マンが名刺交換したリード情報から優先順位を付けがちでした。しかし、まだ接点を持てていない「未開拓の重点アプローチ企業群」、いわゆる「ホワイトスペース」と呼んでいますが、ここに対してABMを実践したほうが、より高い営業効果が期待できます。そのため、弊社では顧客データを統合したうえで、まだ顧客になっていないホワイトスペースの攻略を重要視しています。
図:ABMのデータ概念図
ABMは「個人ベースではなく企業単位で営業活動を行う」というところだけで話をされることが多い印象ですが、企業単位で未開拓の「ホワイトスペース」を含めてアプローチする、というところが重要な考え方なのですね。
そうですね。既に名刺交換しているけど、まだお客さんになってない個人商店の社長がweb(サイト)に何回も訪問しているから、(その企業が)いいお客さんになるわけではありませんからね。マーケティング担当者が営業に送客すべきは、既存顧客の属性傾向と類似する「ホワイトスペース」から抽出されたリード情報なんです。
またそのリードに、どのような顧客体験を通して営業担当者に送客するかも重要だと考えています。そこで弊社では、ABMが効率的に行えるよう、DMやFAX、DACさんと構築した『企業ターゲット広告』などのデジタルマーケティング手法などを使って新規開拓や顧客育成のご支援をしています。
図:企業ターゲット広告の概念図
FAXします?(笑)
まあ従来のツールではあるので、DACさんが扱うアドテクノロジーなどと組み合わせる形式ですね(笑)。ハイレゾ時代にもアナログレコードの良さもあるはずで、電話や手書きDMを含めて、FAXなど従来の手法は今だからこそ活きてくると思っています。というのも、いま流行りのマーケティングオートメーション(以下、MA)ではメール配信が中心になるかと思いますが、メールって多くても5%程度しかクリックされないので、95%に対してのアプローチはおざなりになりやすい。
そこにどうやってアプローチするかですが、DACさんと構築した『企業ターゲット広告』や『AudienceOne® データエクスチェンジ機能』等と組み合わせて、『従来のアナログな方法』も併用して一斉配信することは方法としてありだと思っています。従来からの弊社の強みですしね。いわゆるアナログレコードのハイレゾ音源化というか、最適な形でABMを支援していければと思っています。
改めて整理すると、ABMの進め方としては、名寄せや属性付与を行ったうえで分析を行うという形ですよね。とすると、まるっと御社にデータをお預けして分析をお願いするという形になるのでしょうか?
以前はそのような形でした。今は、ABMツール「uSonar®」をご提案することが多いですね。「uSonar®」は顧客データを統合し、属性を付与して、顧客の傾向を可視化して、リスト抽出するツールです。既に利用しているsalesforceなどの営業支援ツール(以下、SFA)やMAとAPI連携して、データ統合・属性付与していきたいとか、ホワイトスペースを開拓していきたいというご要望を頂くことが多いのですが、この「uSonar®」を各種ツールと連携することで、取引先データ・リード情報・ホワイトスペースのデータをクラウド上で統合し、アプローチすべき企業特性を持つターゲット企業の選定が容易になります。
ABMツール「uSonar®」はどのように使うツールなのでしょうか?
使い方としては、まずリードの情報や既存顧客の売上が立ったデータを(API形式などで)お預けいただきます。預かったデータを企業データ「LBC」で名寄せをし、年間の取引社数を算出します。弊社のデータベースと突き合わせることで取引企業のうち製造業が何社とか、(企業の売上規模が)100億円以上は何社、という事が弊社の属性情報が付与された状態でわかります。その結果、例えば100億円以上の売り上げにつながっている企業は製造業(の企業)が多かった、ということが分かれば、「未開拓で100億円規模の製造業の企業はあと何社あるか」というのを弊社のデータベースから抽出します。
要するに「大きく売り上げが見込める企業属性を持っているのだけれど、既存顧客になっていないというリスト」などを抽出できるということです。この機能を通して、企業はこれまで把握できていなかった自社の強みが分かり、弱みの拡大余地を把握することが出来ます。
図:ABMツール「uSonar®」の画面イメージ
またuSonar®は、企業がこれから取り込む新規データに情報を付加させてからSFAなどに取り込むことも可能です。例えば、SFAなどに情報を登録する際に、uSonar®を通して登録すると、名刺には無い業種や売上げ規模、従業員数、法人番号などが自動で付与されます。そのため顧客データを整理する際、担当者の判断で業種が情報通信業になったり、情報サービス業になったりして、検索対象にならないケースなどを防げます。また事業所、本社、親会社や子会社の資本関係が分かる独自で採番していた企業コードも自動で付与できるため、ABMを実践する上で使いやすいデータが簡単に構築できます。
御社のデータベース、企業データというのはどのように収集されたものなのでしょうか?
弊社自身で集めていて、企業データで言えば、約820万拠点のデータがあります。有価証券報告書とか、登記簿、電話帳、企業のwebサイトをクローリングする等の基本的な収集方法から、官公庁への開示請求データ、電話調査、地図の表札データ、名刺データ、弊社のお取引先からの企業調査依頼など様々なソースを元に構築しています。これらのソースを元に創業当初から過去情報を蓄積しているため、現在の820万拠点のデータの裏側には、約1,500万拠点分の本社や事業所の変遷の情報を紐付けて今も管理しつづけている点が、他社との違いになるかと思います。
すごい量のデータですね。だからこそ網羅された企業データになり、ABMにも活用できるのですね。
そうですね。弊社のデータを活用してABMを行なっている企業は、増えてきています。SFAやMAを入れてABMを実践していきたいと思っているものの、ホワイトスペースをどう開拓していこうか、というのを課題に持たれている企業様にuSonar®をご活用いただくケースは多くなってきました。
実は御社のAudienceOne®との取り組みも、この「ホワイトスペース」の攻略用なんですよ。MAやSFAは、あくまでもリード獲得した後のフェーズで活用するものです。その手前の新規にリードを獲得する手段としては、従来は展示会やweb経由の問い合わせとか、電話するなどの方法しかなかった。それをABMの考え方をもとにweb広告を出稿するということが可能になり、(そのご案内が)とても反響が高くなっています。また、メールをクリックしない人へのアプローチも検討している施策の1つです。この領域はMAではフォローされていないので、取り組みとして御社のサービスを使うというのも一つありだろうと考えています。
なお、弊社では「LBC」というデータベースが裏側にあるので、弊社のデータとMAを連携させることが可能ですし、SFAとも連携も可能です。例えば、受注した「ABC株式会社」というのが、実際にどこからのチャネル、どの広告を踏んでどう来たのか企業単位に集約して分かります。このように一気通貫で取り組みが出来るのでROIを測りやすいよね、という(使い方をしてくれる)ところを目指していきたいな、と。そこまで(の取り組みが)出来ている企業はまだ少ないですが、そういった思想でやっています。
企業単位の広告配信って、Facebookなどは機能としてもちろんありますけれども、そうじゃないところって言うと、本当にここに2-3年、初めて出てきたお話なんですよね。なので、「まだこれから」というのがあるのかもしれないですね。
そうですね。現状でいえば、ホワイトスペースで抽出したリストは、あくまで可能性が高いというリストなので、その時点ではユーザーニーズはわからないことが多いです。なので実際の取り組みとして、リストをもとに御社の広告を出す(DACに広告出稿する)ことによって、ある程度、その市場における需要やニーズを測ることができると考えています。
データに基づいて戦略を立案するために広告を流すということでしょうか。
はい、そのようなイメージです。ホワイトスペースで抽出したリストに対して一斉に広告配信をすることで、市場だけでなく、企業単位でその広告に対するニーズを把握できます。なので、商品開発フェーズでも使えるでしょうね。現在は、「既存顧客を除外してホワイトスペースだけに広告を出せる」というのと、「(広告出稿した際に)クリック(した)企業リストを出せる。」という、2つのポイントが結構刺さっていますね。広告配信を行ってみて「1回以上clickされた企業のほうが、受注率が40倍高かった」というお客様の声も聞いているので、有用な取り組みではないかと考えています。
少し話を戻しますが、弊社のマーケティングでは『効率的にマーケティングをするためには、「CDI(カスタマーデータインテグレーション)」(といっていますが)、顧客データを一元化するのが必要だ』という話をよくしています。弊社はデータベースの会社だからこういう言い方をしているのはあるんですが、つまり「プロモーションを始める前に、まず現状を把握しましょう。」と。
顧客データの傾向とか、リードは何社あるのかとか、そういう現状をきちんと把握して、未開拓のアプローチすべき企業は何社あるんだ、とか。そういうことを「マップを作る」と言っていますが、このマップを作ることが重要で、マップを作るためには顧客データとか今の試算とかデータ統合しないとわかりませんよね、と。ですので、顧客データ一元化「CDI」した後にアプローチリストを作って、そこに対してプロモーションしましょう。という流れでよくお話をさせていただいています。
図:データに基づいた戦略立案イメージ
すごくその部分、我々の考え方に非常に近いというか。
そうですよね。DMPですもんね。
そうです。DMP活用は同じロジックというか、同じ話ですね。データを統合して、3rdパーティ(データ)も1stパーティ(データ)も一元管理して、そのうえでペルソナを見つけてアプローチしていきましょう。みたいな。
DMPとかDSPとかって、正直、何でしょうね。弊社ではCDIと呼んでいて、CDPという言葉もありますが、概念としては結局のところ一緒なんですよね。また、データを扱う上で、アドフラウドの問題、個人情報保護とか、いろいろあるんですけど、この『企業ターゲット広告』はあまり関係ないと思ってるんですよ。
だから、そういう問題も回避できると思っていて、詳細にペルソナ見つけてアプローチしていける。企業属性でセグメントするのは、今のDMPやDSPにおいて結構有効かなと僕は思っていたりします。
確かに、企業のPCに配信しているからあまりアドフラウドを考えなくていい、というロジックはもちろんありますね。MarketOne®でも、企業系の属性情報(を活用した広告出稿)の引き合いは上がってきていますね。
そうですよね。さきほど、「広告配信を行ってみて1回以上clickされた企業のほうが、受注率が40倍高かった」という話を紹介しましたが、効果が出ていることも影響しているのではないでしょうか。現在は、クリック(した)企業リストを活用する方法として、広告配信を行った後にもう一回uSonar®に取り込む、という仕組みも構築しています。
つまりクリック(した)企業リストのインプレッション数やクリック数、CTRなどの広告への反応率のデータを活用して、もう1回ニーズを把握した上でホワイトスペースを抽出できるようにしているんです。これは、1年ぐらいずっと取り組んでいる企業さんもいらっしゃるんですが、広告の計測だけでなく、SFAやMAとも連携して、実際のマーケティングやフィールドセールスの情報も加味して一元化した情報を用いて、ABMを実践されていらっしゃいます。
そのような形で実績データを貯めていくのって、1年ぐらいが適切なんでしょうか?ホワイトリストを開拓していくという意味で。
そうですね。米国のリサーチ&コンサルティング会社であるSiriusDecisionsの調査によると、セミナーやイベント開催で獲得したリストのうちすぐにアプローチをかけて反応を示すのが全体の25%程度と言われていますが、同時に、残りの75%の内80%は“2年以内に購買行動に移る”という結果が出されています。
この結果から見ても、BtoBだとマーケティングの効果を計るために計測する期間は2年ぐらい必要でしょうね。弊社も2年ぐらいはナーチャリング(ニーズ醸成、関係強化)していくため、日々情報を追っています。BtoBは長い期間追っていく必要があるからこそ、効率的にアプローチできるところをリスト提供していく必要があるのかなと思います。
最後に、今後の取り組みについて教えてください。
「情報が企業を自由にする」。これが今弊社のキーワードになっているんですが、これは国会図書館の「真理がわれらを自由にする」という銘を普遍化したものです。つまり、弊社は固有名詞を集約し、世界を認識することが、クライアントに選択の自由をもたらすと考えています。だからこそ質の高い情報をきちっと集めて、統合した有益な情報をたくさん提供していきたい。
企業データに関する部分で言うと、この企業はクリックされる企業とか、(AudienceOne®が保有しているような)そういうweb上の情報っていうのも、弊社のデータと一元化することで、効率的な営業展開できるだろうし、繋げていけたらいいですよね。
だから固有名詞って言い方をしていますけど、企業データ「LBC」を活用して一元化して効率や安全を提供する。御社とのプロダクトである『企業ターゲット広告』や『AudienceOne® データエクスチェンジ機能』も含めて、そういったデータを一元化した仕組み、質の高いデータを提供できるシステム基盤を作っていければと考えています。そのためにも企業データ「LBC」を、BtoBマーケティングでのデファクトスタンダードなマスターデータとして今以上に浸透させていきたいですね。
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(聞き手:DAC AudienceOne®チーム/編集:飯高)