【詳細解説】Amazonが提供するデータクリーンルーム Amazon Marketing Cloudとは??

 2023.01.25  大塚 皆人

データクリーンルームという言葉を聞いたことがあるでしょうか?

デジタルマーケティングにおけるデータ分析の重要性が増している今日。
新たなデータソリューションや分析サービスが様々な広がりを見せている中、特に大きな注目を集めているのがデータクリーンルームと呼ばれるサービスです。
数多くあるデータクリーンルームの中でもここ最近、Amazon社が提供するデータクリーンルーム「Amazon Marketing Cloud」が急激な発展を見せています。

今回はAmazon Marketing Cloudの概要や活用事例、今後の展望など詳しく解説していきます。Amazon社が提供するデータクリーンルームとはどんなものか。
注目ポイントやその重要性について少しでも気になった方はぜひ最後までご覧ください。

データクリーンルームとは

まずはデータクリーンルームについて簡単に解説したいと思います。
データクリーンルームとは各プラットフォーマーが集積した広告データに、企業がアクセスできる環境のことを指します。


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プラットフォーマーはユーザーのデモグラフィックデータや興味関心の属性データ、検索・購買・ITサービスの利用等の行動データなどをユーザー個別のIDをもとに管理・所有しています。
個人の特定につながるプライバシーなデータは厳重な管理の元、外部に公開することは決してありません。
ユーザー個人ではなく、あくまで特定の属性を持つ集団として、個人を特定できない様に加工し属性データのみ抽出可能にします。
そのデータ分析基盤を一部で提供しており、こういった環境をデータクリーンルームと呼びます。

データクリーンルームが注目されている2つの理由

なぜデータクリーンルームが注目されているのでしょうか。
背景としてデジタル広告業界で起こっている2つのトピックスが関連しています。

cookie規制による広告計測トラッキングの減少

広告をはじめユーザートラッキングに利用されるcookieは、ここ近年その利用に大きな規制がかかることとなり、それに伴いデジタル広告の配信・計測は大きな影響を受ける結果となりました。
そんな中、プラットフォーマーが所有しているユーザーIDを計測の際に利用することでセッションやcookieを跨いだ行動であってもデータの紐付けを行い、ユーザートラッキングの精度を高める手法が有力な計測手法として取り入れられています。

法によるデータ活用規制の強化

また電気通信事業法や改正個人情報保護法の改正により、個人情報の利用に制限が掛かりプラットフォーマーは利用者の情報を外部に送信する際により厳しい規制が設けられることになりました。

☟詳細についてはこちらでも解説☟
改正電気通信事業法のポイントとは?
・いまさら聞けない、改正個人情報保護法のキホン!

以上2つの問題に対してのアプローチが、まさにデータクリーンルームというソリューションです。
ユーザーIDベースで計測された様々な計測情報を、その個人が特定されないようにしつつ様々な情報を抽出・分析できるという点は、まさに計測においてその精度と柔軟性を両立する事ができる仕組みとなっているからです。

データクリーンルーム背景まとめ

現在では様々なプラットフォーマーがデータクリーンルームを開発しデータを自由に分析できる基盤をサービス提供しており、これらを活用することでデジタル広告のプランニングや効果分析は非常に柔軟に行うことができます。まさに最先端のマーケティングには欠かせないものになっています。
プラットフォーマー各社の提供するデータクリーンルームには様々な特徴がありますが、今回はAmazon社が提供するデータクリーンルームAmazon Marketing Cloudについて詳細を解説していきたいと思います。

Amazon Marketing Cloud3つの特徴

Amazon Marketing Cloudについて概要を理解しやすいよう3つの特徴を基にみていきます。

1.Amazon IDを基にデータ管理を行っている

外部の調査によるとAmazonの利用者(Amazon IDの保有者)は日本において5,000万ユーザー以上いると言われています。
Amazonでの閲覧・購買等の行動データやAmazon Primeを始めとする様々なサービスはこのAmazon IDによって管理されており、Amazonはそれらの行動履歴やサービス利用履歴から様々なオーディエンスデータを作成しています。

例えば、閲覧した商品や購入した商品の情報からどういったカテゴリーに興味関心があるか。
購入商品から推定するライフスタイルはどういったものか。興味のあるコンテンツの内容は何なのかといった情報です。
また、興味関心データに限らず、年齢・性別・地域等(※)のデモグラフィックデータも所有しており、オーディエンスデータとして蓄積され、すべてAmazon IDをベースに管理されています。

Amazon Marketing Cloudではそのようなデータの一部にアクセスしそれらを使った分析を行うことが出来るようになっています。

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(※)年齢・性別・地域といったデータ以外にも、年収や職業などの推計データも所有しており、分析に利用できる。

Amazon Adsは、3rd Partyデータを提供するDMP Audience One®が保有している年収や職業などの推計データをセグメントデータとして広告配信に利用できるようになっており、AMCではAmazon DSPのレポートデータを利用することで、年収や職業などの推計データを活用した分析が可能となる。

2.Amazon Adsの活用をメインとし提供される

他のデータクリーンルームに共通するポイントではありますが、基本的には広告プロダクトの配信効果分析を行うことを目的に提供されているサービスとなっています。
Amazon Marketing CloudについてもAmazon社の提供する広告サービスAmazon Adsの配信・分析のために提供されています。

3.外部データの連携が可能

扱えるデータはAmazon Ads内に閉じたものだけではなく様々なデータを連携することが出来るようになっており、主に3つのデータ連携方法があります。

①企業が保有する1st Partyデータのアップロード
Amazon上に用意されているデータに加え企業が保有する1st Partyデータ(ハッシュ化されたメールアドレスや電話番号)をアップロードし連携することが可能です。
アップロードしたデータはAmazon ID と突合される形で取り込まれ、自社の1st Partyデータ×Amazon所有のデータという形で分析を行うことが出来ます。
なお、データをアップロードする際はハッシュ化したデータを送信する形を取るため、しっかりとデータのプライバシー保護が遵守されるようになっています。

②DMPの接続
一部認定されたDMPもAmazon Marketing Cloudに接続可能となっており、DMP上に様々なデータを連携させ、更にそれらをAmazon marketing cloudと連携させることでより多くのデータをAMC上で分析することが可能となります。

③Sizmek計測(サービス提供終了)
Amazonの提供する3rd Party広告配信・計測ソリューションであるSizmekを活用することで、Amazon Ads以外の広告配信データもAmazon Marketing Cloud 上に取り込む事が可能となっています。
SizmekタグはGoogle/Yahoo! のDSPや検索広告をはじめ、Meta/Instagram等のSNS広告など数多くの広告メニューに対応しており、通常配信では確認できないAmazon内での購買をCVとしたキャンペーンの分析が可能です。

※Sizmek(Amazon Ad Server)は媒体の提供終了により2023年12月を持って終了となりました。
上記に伴いまして、AMC上でのSizmekデータを用いた分析も実施が不可となります。

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以上の様にAmazon Marketing Cloudでは様々なデータを連携しそれらをかけ合わせた多角的な分析を様々な切り口で行うことが出来る汎用性の高い分析基盤となっています。


Amazon Marketing Cloud の活用方法

ではここからはAmazon Marketing Cloudを活用したデータ分析の方法をご紹介します。
前述の通り、Amazon Marketing CloudではAmazon Adsの配信データをより詳細に分析することが出来ますが主に2つの利用目的で分析を実施する事ができます。

①広告プロダクトを横断した成果の可視化


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通常の広告レポートでは広告プロダクト単体ごとのデータを確認することが出来ますが、それらを横断した効果を把握することは出来ません。
しかしAmazon Marketing Cloud上では、ユーザーIDをキーとして各広告プロダクトの配信データを集計することで、広告プロダクトの合計接触回数や重複率、使用コスト等を集計できます。

これらを可視化することによって、例えばスポンサー広告とAmazonDSPの重複接触がどれくらいの割合で発生していたか、またその際のCV率は単体接触と比較してどの程度増加していたかを検討しリーチを獲得するために最適な広告配分比率を決定する等のプランニングを行うことができます。
また、購買までの広告接触経路を抽出しファーストタッチViewの広告キャンペーンを確認することで、これまで見えなかった他広告キャンペーンのアシスト効果を可視化することができます。

以上のように広告の全体施策を策定するに当たり広告プロダクトを横断した分析を行うことで、最適なマーケティング戦略の立案を行うことが出来るようになるでしょう。

②運用型広告の効果改善

こちらは、通常の運用型広告のレポートでは確認できない数値を抽出し、それを運用改善に活かす方法です。
通常の広告レポートで出力可能な最小時間粒度は1日単位となっていますが、Amazon Marketing Cloudには秒単位でデータが蓄積されているため通常の運用型広告では確認できない時間帯別の効果を可視化し、運用の効果改善につなげることができます。

例えばユーザーのインプレッションが最も集中する時間を求め、その時間帯への配信を強化するなど広告運用戦略の考える判断材料とすることができます。

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データポリシー

Amazon Marketing Cloudではユーザー特定に繋がる可能性のあるデータはセンシティブレベルが設定されており、データ項目によって抽出可能な最低母数が異なっています。
またユーザーID自体を抽出することは出来ない仕様となっているためデータの分析内容によってはデータ数が少ないため結果の一部が欠損した形で表示されることがあることに注意する必要があります。



まとめ

今回はAmazonが提供するデータクリーンルームAmazon Marketing Cloudについて解説を行いました。
Amazon Marketing Cloudには多くのデータが揃っており、また様々なデータを連携することが可能なため、Amazon Adsを活用したマーケティング施策を実施する際は強力なソリューションとなることがお分かりいただけたのではないでしょうか?

Hakuhodo DY ONEではこのAmazon Marketing Cloudを活用したソリューション「WISE Hub for EC」を提供しています。
Amazon広告を運用しているがよりデータ分析の幅を広げたい・さらにAmazonマーケティングを深化させていきたい方は、お気軽にお問合せ下さい。

この記事の執筆者

大塚 皆人

2018年にDACへ入社。Amazon、楽天、Yahooショッピング初めEC媒体のソリューション開発&販売を担当。専門はECマーケティングにおけるデータ分析&検証。

2018年にDACへ入社。Amazon、楽天、Yahoo...

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