2017年頃からブランドセーフティを強化する声が高まってきました。その口火をきったのは2017年3月、当時世界第6位の広告代理店ハバス(本社フランス)がYouTube広告からの撤退を発表したことかと思います。ハバスのYouTubeへの広告出稿額は日本円にして年間240億円に達していたようですが、その全てを取り上げたとのことです。
これは、過激主義者や人種差別をあおるYouTube上に投稿された動画に大手企業の広告がついていたことを「イギリス・タイムズ紙」が報じたことが、発端のようです。
その後、250超の大手企業・組織が相次いでYouTube向け広告を停止したと報じられました。
(出典元:https://forbesjapan.com/articles/detail/15613/)
今回は、広告出稿する時にリスクとして考えておかなければならない、ブランドセーフティの重要性と対応策について、ご紹介します。
ブランドセーフティってなに?
JIAAによるブランドセーフティガイドラインには「広告掲載先の品質確保による広告主ブランドの安全性のことをいう。」と定義されています。
これは「ブランド視点」の定義で、冒頭の事例の通り、広告主が広告出稿する際に、掲載先にある不適切な記事やコンテンツと合わせて広告が表示されると広告主のブランド毀損につながるため、掲載先を厳選するなど掲載先の品質確保が必要、という事です。
実は「メディア視点」でもブランドセーフティを定義することができます。
メディア視点での定義は「訴求製品、内容の品質確保による媒体社ブランドの安全性のこと」。
つまり、不適切な広告主や製品を広告として自社メディアに掲載してしまうことで、メディアのブランド毀損につながります。
ただし、メディア視点のブランドセーフティは広告を事前審査することで対策できるため、以前から実施されています。そのためあまり話題にはなっていないかと思います。
しかし、ブランド視点の場合は、運用型広告への出稿が多い昨今のデジタル広告においては、広告の掲載先(サイト、コンテンツ)を全て把握し、確認することは困難です。
そのため、悪質な著作権侵害サイト、ヘイトコンテンツ、反社会勢力が執筆しているブログ、動画投稿をはじめとする、広告掲載先としては不適切なメディアに、自社ブランドの広告が掲載されてしまい、ブランドが毀損してしまう可能性があります。
そのため、本記事では「ブランド視点」のブランドセーフティについて述べます。
ブランドセーフティってそんなに重要なの?
企業活動の根底には社会貢献があります。企業は自らの決定や活動が社会、環境に及ぼす影響について責任を持たなければなりません。
例えば、反社会勢力が運営するサイト、コンテンツに広告を出稿するということは、反社会勢力に対し、広告費として活動資金を提供、サポートしていることになります。
つまり「反社会勢力の活動、思想を支持しているスポンサー」である、と消費者に誤認されてしまう可能性があります。
では実際、ブランドセーフティに影響を与えるサイト、コンテンツへの掲載によるブランドリスクはどのくらいあるでしょうか?
下のグラフは、IAS社による2018年度下期のブランドリスク調査結果です。
モバイルディスプレイのプログラマティック(運用型)の場合、9.9%がブランド毀損につながる可能性があるサイト、コンテンツへの掲載となっています。
※IAS社2018年下半期メディアクオリティレポートより抜粋
特に注意すべきであろう「高レベル」「極めて高レベル」なブランドリスクは、プログラマティック配信数の0.8%、1,000,000imp配信の場合だと8,000impが対象となります。
全体量としては「少ない」から、広告が表示されたタイミングで、ネガティブな認識をする消費者はほとんどいないだろう、と思うかもしれません。
しかし、これをSNS(Social Network Service)で拡散されてしまったらどうなるでしょうか?
今まで気にしていなかった消費者や、反社会勢力が運営するサイト、コンテンツに掲載された広告を見ていなかった消費者でさえ、その広告のブランドに対してネガティブなイメージを持つようになってしまうことは想像がたやすいです。
当然、ネガティブなイメージがついたブランドは、ブランド価値の低下、顧客離れ、売上の減少、株価の下落など、企業活動に直接的なダメージを受ける可能性があります。
一度、ブランドについたネガティブなイメージを払拭することは非常に難しいです。
そのための予算、期間はいったいどれほど必要となるでしょうか?
つまりCPC、CPA、ROASといったKPIを追うよりも優先して、まずはブランドセーフティが取り組むべき課題となります。
どうやってブランドセーフティすればよいの?
現在、広告主/広告会社ができるブランドセーフティへの対応策は、アドベリフィケーションツールによって、不適切と思われるサイト、コンテンツへの広告配信を監視、ブロックすることです。
国内における主要なアドベリケーションツールとして、IAS、MOAT、DoubleVerify、CHEQ、comScoreなどがあります。
これらのツールを使用して、次のようなブランドセーフティの対応が可能となります。
※対応の有無や対応方法は、ツールによって異なります。
(1) ブランド毀損カテゴリサイトへの配信ブロック
(2) 不適切サイトへの配信ブロック
(3) 指定キーワードが含まれるコンテンツへの配信ブロック
このような対応によって、ブランドリスクを回避することが可能です。
各対応方法について、詳しく説明します。
(1) ブランド毀損カテゴリサイトへの配信ブロック
ツールによるクローリングや配信実績から作成されるサイトリストに基づいてブロックすることが可能です。例えばIASでは、ブランド毀損カテゴリを下図のように分類しております。
(2) 不適切サイトへの配信ブロック
自社運用実績の監視、分析結果から不適切と判断したサイトのブラックリストを作成して、広告配信をブロックします。
また、警察庁/インターネットホットラインセンター(IHC)が提供するIHCリストでは違法、有害サイトを、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA)が提供するCODAリストでは著作権侵害サイトを公開していますので、これらを活用するのもよいでしょう。
(3) 指定キーワードが含まれるコンテンツへの配信ブロック
広告主/広告会社がキーワードを指定して、該当するキーワードが含まれるコンテンツへの広告配信をブロックします。
ほとんどのアドベリフィケーションツールではコンテキスト(文脈)は見ず、キーワードのみでの判断となります。
そのため適切なキーワードを選択しないと、問題ないコンテンツでもブロック対象となり、そもそも配信数が少なくなってしまう、といった注意が必要になります。
まとめ
「ブランドセーフティ」についての重要性と対応策について、ご理解いただけましたでしょうか?
DACは、JICDAQ品質認証事業者として、ブランドセーフティに対応したアドベリフィケーションツールを取り扱っており、広告主/広告会社の利用を支援します。
アドベリフィケーションツールについて興味がございましたら、ぜひお問い合わせください。