ゲームマーケティングを徹底解説 ~新たな“ユーザー体験”とは? ~

 2025.05.21  石川 知美

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皆さんは、ゲームマーケティングという言葉をご存知でしょうか?
これは、ゲームを広告メディアとして活用し、自社商品のPRやブランディングをおこなう施策です。
近年、企業のマーケティング戦略において、ゲームの活用が急速に拡大しています。

その重要性は、2023年に世界的な広告賞であるカンヌライオンズが2023年に「Entertainment Lion for Gaming」部門を新設したことからも明らかです。主催者は「この分野の進化の速度と、クリエイティブ・マーケティング コミュニティ内でのゲームの関連性の高まりを考えると、自然な流れのように感じます」とコメントしています。(※1) 

また国内においても、若年層を中心にゲームユーザーが増加し、ゲームプレイ人口は5,553万人を突破(※2)
若年層をターゲットとする広告主にとって、ゲームは無視できない新たな接点となりつつあります。

では、なぜ今、ゲームマーケティングが注目されているのでしょうか? 
そして、具体的にどのような活用方法があるのでしょうか?

この記事では、ゲームマーケティングについて、基礎知識から具体的な戦略、成功事例までを徹底解説します。ぜひ、最後までご覧ください。


※1 引用:カンヌライオンズがゲーム部門を新設、ゲームプレイを通して人々とブランドのつながりを作った施策を評価|AdverTimes.
※2 出典:2023年の国内ゲーム市場規模は前年比4.6%増の2兆1255億円。“ファミ通ゲーム白書2024”で過去20年の国内市況推移を紹介 | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com

ゲームをメディアとして活用するメリットとは?

はじめに、ゲームをメディアとして活用するメリットを解説していきます。

ゲームが日常生活の一部となっているユーザーの増加

国内では約2人に1人がゲームをプレイしており、8割近くがスマホゲームユーザーと言われています。特にZ世代・α世代においては、「毎日ゲームをプレイする」という回答が過半数を超え、ゲームはもはや日常生活の一部となっています。

ここで、世代ごとの可処分時間の使い方について見てみましょう。
Z世代・α世代を中心とした若年層では、テレビや新聞などの従来型メディアに比べて、YouTubeやSNS、そしてソーシャルゲームへの接触時間が上回るという特徴があります。
また、可処分時間の2割近くをゲームプレイ時間に費やしているという結果も出ています。
企業がZ世代・α世代を中心とした若年層にリーチするには、“ゲーム空間における接点の設計”が必要不可欠であるといえるでしょう。

可処分時間の構成割合出典:Newzoo How Consumers Are Engaging with Games in 2022 | Newzoo Consumer Insights Report

ゲーム空間は“自然な形での広告接触”が可能

また、ゲーム空間内で接触する広告は、ユーザーにとって“押し付けられている”という印象を与えにくく、自然な形でブランドとの接点を提供することが可能です。

たとえば、ゲーム空間内に設置された看板型広告は、従来のようにプレイ画面に覆いかぶさるポップアップ形式の広告と比較して、ゲームプレイを阻害することがなく、ユーザーへ自然な形で広告を訴求することができます。
他にも、ゲーム内アイテムとして企業の商品を登場させたり、企業が実際の店舗を疑似体験できるゲームを作るといったように、ゲーム空間そのものを制作することも可能です。

このようにユーザーの没入体験の中に広告を統合することで、高いブランド想起・好意形成が期待できます。「広告をコンテンツの一部として楽しむ」という動きが定着しつつあるのです。

SNSとの連動性が高く、バイラル効果を生みやすい

ゲームコミュニティはゲームに関する情報を共有しあったり、オンライン・オフライン問わずさまざまな形態のイベントや交流の場があったりと、活発な傾向があります。
また、SNSや専用フォーラム(Reddit、Discordなど)では、ゲームに関する情報やプレイのコツ、戦術などをリアルタイムで共有する文化も活発です。

ゲームはSNSとの親和性も高いことから、キャンペーン施策のバイラル効果を生むことも可能です。キャンペーン施策をきっかけに、実際にTikTokやXでユーザーがゲームの面白さや面白かった体験を共有した投稿が拡散されれば、結果的に企業のブランドや商品・サービスなどの魅力を伝えることに繋がります。

ユーザーが自発的にシェアする仕組みを作ることで、自然に認知度を高められるだけでなく、企業はユーザーの投稿からキャンペーン施策に対する生の声を拾いやすいというメリットも期待できます。このようにユーザーによる“自発的な拡散”を生みやすいゲームマーケティングは、高いマーケティング効果を得るための新たな手法として注目されています。

ユーザーの“記憶に残る体験”を設計できる

Hakuhodo DY ONEの子会社であり国内初のゲームメディア専業マーケティングエージェンシー
「ARROVA」は、“ゲームそのものをユーザー体験の機会”と捉えています。

ゲームの持つ最大の特長は、「没入感」=ユーザーが能動的に参加する体験です。
一般的に、一方的に伝えられる情報よりも、没入した状態で伝えられる情報の方が人の記憶に残りやすいとされています。ユーザーが能動的に参加しているゲーム環境での広告接触は、「自分が体験した出来事」として印象づけられやすく、ユーザーの“記憶に残る体験”の設計が可能です。

また、ARROVA独自でブランドリフト調査を実施したところ、スキップ可能な動画広告や静止画バナーなど従来の広告に慣れたユーザーがゲーム内体験という新しい形で広告に接触することは、ブランドエクスペリエンスの観点からも高い評価を得られる結果となりました。

ゲームマーケティング活用の多様化

ゲームを活用したマーケティング手法は多様化し、選択肢も増加しています。
この章では、ゲームマーケティングの種類を一部紹介していきます。

インゲーム広告

インゲーム広告とは、ゲーム空間内に設置された看板型広告のことを示します。
従来のポップアップ型の広告とは異なり、ゲームコンテンツの一部として表示されるのが特徴です。プレイを阻害することなく、ユーザーへ自然な形で広告を訴求することができます。

インゲーム広告

リワード広告

リワード広告とは、広告を視聴することでゲーム内の報酬(リワード)が得られる広告のことを示し、スマホゲームや簡単な操作で短い時間に楽しめるカジュアルゲームを中心に使用されている広告手法です。
報酬は実際にゲーム内で使用できる特典(アイテムやキャラクター、リトライ権など)で、視聴の有無をユーザー自身により選択することが可能です。視聴すれば報酬がもらえるため、ユーザー側からしても広告に対する忌避感が少ない手法として注目されています。

リワード広告

*Hakuhodo DY ONEの子会社であり国内初のゲームメディア専業マーケティングエージェンシー「ARROVA」は、株式会社TBWA\HAKUHODO Nissan Unitedと連携し、Niantic ,Inc.が運営する位置情報連動AR(拡張現実)ゲーム『Pokémon GO』におけるゲーム内リワードAR広告の配信および効果検証を、日本の広告会社として初めて実施。 当施策では、日産自動車の新型「日産ノートe-POWER」の認知獲得を目的に、ゲーム内に3D広告を展開しました。『Pokémon GO』のマップに表示されるバルーンをタップすると3DのリワードAR広告が始まり、車をいろいろな角度から見たり、カラーバリエーションを見ることができます。広告体験を楽しんだ後は、ゲーム内のアイテムがもらえ、公式HPリンクへの遷移も可能です。
実際の配信効果については、以下リリースよりご確認ください。
➢リリース詳細はこちら

ブランドゲーム制作

ブランドゲーム制作とは、既存のブランドイメージや世界観をゲームに落とし込み、ブランド独自のイメージ強化・認知拡大を目的としたゲーム制作のことです。
FortniteやROBLOXなどの大型ゲーミングプラットフォーム上でのゲーム制作や、ブラウザでのカジュアルゲーム、スマホアプリゲームの開発など、予算や実施目的に合わせた制作・展開が可能です。ユーザーのブランドへの興味や商品理解の促進、好感度を向上させる効果が見込めるだけでなく、ゲームを通じた新たなコミュニティの形成なども期待できます。

ブランドゲーム制作
▲Fortnite上でクレジットカードの機能を実体験できるシミュレーションゲーム。
プレイヤーはゲームを楽しみながらキャッシュレスの利便性やユーザビリティを実感できる。

IPコラボ

IPコラボとは、異なる企業やブランドがそれぞれのIP(知的財産)を活用し、共同の商品やコンテンツを創造する手法です。
ゲーム内アイテムとして企業の実際の商品を登場させたり、アバターに着用させるブランド衣装を展開するなど、ゲームIPとのコラボには多様な活用方法が期待できます。
ユーザーの没入体験の中に広告を統合することで、高いブランド想起・好意形成が期待できるほか、ゲーム空間の中だけではなく、実際の商品として展開し訴求することも可能です

ストリーマー連携

ストリーマー連携とは、ゲームストリーマー(オンラインゲームの実況動画を配信する人)と協力関係を築き、視聴者増加や互いの利益を図る手法です。
たとえば、ゲームストリーマーが企業の商品やサービスを紹介したり、ブランドゲームの実況配信などをおこないます。視聴者とのリアルタイムのやりとりは高いエンゲージメントを生みやすく、SNSなどでの話題化も狙えるため、インフルエンサーマーケティングにおいても注目されている施策の一つです。

幅広い目的に応じた体験設計

ゲームマーケティングは、短期的な認知獲得から中長期的なファン形成まで幅広い目的に対応でき、ターゲット層や商材に応じて柔軟に施策を設計できる点が魅力の一つです。
ここからは、認知から購買、ファン醸成までのプロセスに沿ってゲームマーケティングの活用方法を解説していきます。

ファネル

①潜在層への認知 インゲーム広告、IPコラボ

商品の認知を獲得するためには、「インゲーム広告」で幅広いリーチを取ることで接触の機会を増やすことは勿論、「IPコラボ」も有効な手段の一つです。

有名IPであれば、すでに多くのファンを抱えており彼らの目に留まることで、今まで接点がなかった人へも認知のきっかけを作ることができます。また、IPコラボは話題性がありSNSやメディアが取り上げやすい企画として拡散力が高い点もメリットです。

商品・サービス訴求 :インゲーム広告、ストリーマー連携、ブランドゲーム制作、IPコラボ

商品を認知し興味関心フェーズに入ったユーザーは、具体的な商品・サービスについて調べ、比較検討フェーズに入ります。

商品・サービス訴求には、視覚的に伝える「インゲーム広告」や高いエンゲージメント効果を生みやすい「ストリーマー連携」、ブランド独自の世界を創り出す「ブランドゲーム制作」も有効です。
他にも、有名IPには社会的な「好意」「信頼」「共感」などの資産があるため、「IPコラボ」の実施によってそれらを自社ブランドイメージにも転用し、商品・サービス利用への心理的ハードルを下げる効果も見込めます。

③獲得系施策 :リワード広告

商品を比較し検討を経たユーザーは、「最後のひと押し」を求められる購買フェーズに入ります。

獲得系施策には、広告を視聴するとゲーム内で報酬が得られる「リワード広告」をおすすめします。広告に対する忌避感が少ない手法で、商品購入や資料請求ページなど外部サイトに誘導することが可能です。また、配信面によっては、デモグラなどでターゲティングできる点もメリットです。

④中長期的なファン醸成 :IPコラボ、ストリーマー連携、ブランドゲーム制作

IPコラボ」や「ストリーマー連携」、「ブランドゲーム制作」などの施策を繰り返し実施し、定期的な更新をおこなうことで、中長期的なファンづくりへのきっかけにもなります。

単なる広告としての発信ではなく、グッズ販売やイベントの実施など、ユーザーが“能動的に参加できる”要素を加えることで、より深いエンゲージメントが期待できるでしょう。

おわりに

いかがでしたか? 今回は「ゲームマーケティング」についてご紹介しました。

若年層へのマーケティング課題を抱える企業が多い中、次世代の獲得に向けて新たなマーケティング戦略が必要不可欠です。ゲームを活用したマーケティング設計が、ブランド認知向上・話題化・ファン醸成を生み出す一つのカギを握るといえるのではないでしょうか。

さらに詳しく知りたいという方はもちろん、ゲームやバーチャル空間での体験設計に興味があるという方も、ぜひお気軽にご相談いただければ幸いです。

ARROVAでは、ゲームを活用した広告施策や、バーチャル空間を活かしたブランディング、エンタメ文脈でのファンコミュニケーション設計など、実現性と話題性を両立させたプロモーションのご提案が可能です。「どんなゲームに出せるの?」「どんな効果が得られるの?」といった疑問にも丁寧にお答えします。
ゲームの中に「広告を出す」のではなく、「“ユーザー体験”の中に自然にブランドを届ける」ための設計を、ぜひ一緒に考えてみませんか?


■ARROVAについて
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ARROVAは、博報堂DYグループの株式会社Hakuhodo DY ONEの子会社。国内初のゲームメディア専業マーケティングエージェンシー。ゲーム空間内に溶け込む「インゲーム広告」をはじめ、CGI ・AR・ブランドゲームといった“バーチャル空間”と “リアル空間”とを接続させるエンターテイメント体験を生活者に提供しています。
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この記事の執筆者

石川 知美

大手人材サービス企業での営業、CRM施策の企画・制作ディレクション等を経験し、2016年デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(現・Hakuhodo DY ONE)へ入社。自動車メーカーのデジタル広告施策プラン提案・運用に携わる。その後、Hakuhodo DY ONEグループ会社の経営管理部門の支援業務に従事、2024年8月よりARROVAの広報を担当。

大手人材サービス企業での営業、CRM施策の企画・制作ディ...

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