デジタル広告ってIT用語やマーケティング用語といった専門用語が多くて難しいですよね。昨今では「ポストクッキー時代」と言われていますが、「これまでと何が違うのかわからない」「そもそもクッキーって何?」と思われている方もいるのではないでしょうか。
本連載(全5回)では、デジタル広告に関わる方はもちろん、全ての方にわかりやすく「ポストクッキー時代」の今後の対策について解説していきます。第3回となる今回は共通IDソリューションの中で、確定ID(ハードシグナル)の代表格であるRampIDについてご紹介します。
Introduction
前回、部長のヤマダさんから「ポストクッキーの対策について具体的に調べてほしい」と言われたタケダさん・ワタナベさんの2人は、いくつかの対策(3つの方向性)の中から、<方向性1>ID単位捕捉の継続である、共通IDソリューションがいいのではないかと話しています。ワタナベさん)
先日はポストクッキー対策の方向性について教えていただき、ありがとうございました。
タケダさん)
この前は一気に伝えてしまったから心配していたんだけど、整理はできたかな?
ワタナベさん)
はい、自分なりに復習をしてきました。
まず、ポストクッキー対策は大きく3つの方向性があって、それぞれ並行して検討しなければいけないこと。且つ、クッキーのようにユーザーを個で捉える共通IDソリューションにも2つの形式があるということでしたよね!
☑ <方向性1> ID単位捕捉の継続
・方向性1-①:推定ID/ソフトシグナル方式
・方向性1-②:確定ID/ハードシグナル方式
☑ <方向性2> 非ID捕捉への脱却
☑ <方向性3> 群単位での捕捉
タケダさん)
そうそう!ばっちりだね。
ワタナベさんはこの中だと、どの方向性でやっていくのがいいと思ったかな?
ワタナベさん)
全部対応することが理想ですが、まずひとつ選ぶとしたら、この中でも規制される可能性が低く、ターゲティング精度の高いと言われている方向性1-②の確定IDから始めてみるのがいいんじゃないかなと思いました。
タケダさん)
私も同じ意見!具体的に確定IDのソリューションを調べてみていて、海外先進各国で既に普及している代表的なものの資料を取り寄せたから部長に説明してみようか。
ワタナベさん)
ヤマダ部長呼んできますねー!
※1:3つの方向性の詳細は、前回記事「ポストクッキー対策はどんな種類がある?ーポストクッキー時代の今後の対策 |連載 第2回」も合わせてご参照ください。
確定ID(ハードシグナル)の代表格「RampID」とは?
ヤマダさん)
お疲れ様。ポストクッキーの対策でいいの見つかった?
タケダさん)
お疲れ様です。いくつか対策は並行して進めていければと思っているのですが、まず今回はクッキーと同じようにユーザーを個として捉えてターゲティングができる確定IDを扱っている共通IDソリューションの導入を優先するのがよいと考えています!
ヤマダさん)
確定ID?
ワタナベさん)
ユーザーが自分で登録したメールアドレスや電話番号などの情報を確定データと呼ぶそうです。
ターゲティング広告などに利用できるように、共通IDソリューションでユーザー許諾済みの確定データを暗号化して生成したIDが確定IDです。推計技術による推定IDよりもターゲティング精度が高いというメリットがあります!
ヤマダさん)
なるほど。どんなものがあるの?
タケダさん)
推定ID・確定IDそれぞれに代表的な共通IDソリューションはいくつかあるようですが、その中でも確定IDで評価の高いLiveRamp社の「RampID」というものを調べてきました!
「RampID」が生成される仕組み
タケダさん)
RampIDについて、ひとつずつ説明していきますね。
私たちのWebサイトは会員のメールアドレスを取得していますよね。RampIDは確定IDなので、この会員のメールアドレスなどの確定データを使って生成することができます。例えば、会員がサイトログインする際にメールアドレス記入すると、そのメールアドレスをハッシュ化してRampIDが生成されます。
ワタナベさん)
ハッシュ化とはなんですか?暗号にすることですか?
タケダさん)
ハッシュ化は、特定の計算手法に基づいて、元のデータを不規則な文字列に置き換えることを言うよ。もし誰か第三者が不正にRampIDを見たとしても、ランダムな文字列だから悪用はできないの。しかもハッシュ化は不可逆、つまり一度変換したあとは元のメールアドレスに戻すことはできないから、一般的に可逆的な技術である暗号化よりもさらに安全性が高い技術になってるよ。
ヤマダさん)
メールアドレスを使うと聞いて心配したけど、セキュリティ面は安心なんだね。
タケダさん)
はい。多重にハッシュ化しているので安全性は高いようですし、ユーザー許諾済みのデータの利用としているため、個人情報保護法の観点でも問題ありません。
また、ログイン時だけでなく、私たちが保有している既存会員のメールアドレスをハッシュ化することでもRampIDを生成することができるようです。
RampIDをベースに、1stパーティーデータの分析や連携を安全に実現
タケダさん)
「RampID」を提供しているLiveRampのことを調べていくと、確定IDである「RampID」だけではなくて、DMP/DCR環境である「LiveRamp Safe Haven(セイフ・ヘイヴン)」という環境も提供しているのでデータの活用も可能ということがわかりました。
ワタナベさん)
DMPやDCRとはどういう意味ですか??
タケダさん)
大丈夫、ひとつずつ説明していくね。DMPは「Data Management Platform(データ マネジメント プラットフォーム)」の略で、データを貯めておく箱みたいなイメージかな。
DCRは「Data Clean Room(データクリーンルーム)」の略で、データのプライバシーやセキュリティを守りながら異なる企業や業界の間でデータを共有したり、分析することができる環境のことだよ。
つまりLiveRampは、RampIDをベースに1stパーティーデータの分析や連携が安全に実現できる画期的なソリューションのようなんです。広告配信に閉じずいろいろな形で活用が可能な機能がついているので、私たちのような媒体社だけではなくて、広告主やデータベンダーなど、様々なデータを持つ企業が導入しているみたいです。
関連ページ
「RampID」を使った広告配信の仕組み
ヤマダさん)
なんだか難しいのだけど…結局、RampIDはどのように広告配信に使われているの?
タケダさん)
例えば、広告主が顧客のデータや他の企業のデータを使ってターゲティング広告を配信したいとします。このデータは先ほど紹介した「LiveRamp Safe Haven」という環境の中で「RampID」を生成することが可能なようです。そのため、広告主が使いたい確定データをRampID化することで広告配信に利用できます。
セキュリティを担保するために、RampIDは企業ごとに異なるIDが生成されるようですが、同じメールアドレスからつくられたRampIDは独自の技術でマッチングすることができるので、Webサイトを閲覧したユーザーをターゲティングできる、という仕組みのようです。
ワタナベさん)
では例えば、A社が昔製品を購入した人に新商品の広告を配信したい時に部長がA社の製品を買ったときに登録したメールアドレスと、部長がうちのWebサイトでログインする時のメールアドレスが同じであれば、RampIDがマッチングし同一人物として認識されて、広告配信されるということですね!
ヤマダさん)
理解が早いなあ。メールアドレスをキーにして、その会社からのメルマガだけじゃなくていろんなWebサイトに配信できるのはいいね。ターゲティングの精度が高いという意味もわかったよ。
「RampID」の強みや特徴
ヤマダさん)
でも、確定IDのソリューションは他にもいっぱいあるんでしょ?
このRampIDは何がいいと思ったの?
タケダさん)
はい。いくつか強みとしているポイントはあるようですが、大きくは3つあります。
①安全性・透明性
②拡張性
③広告在庫の拡大
1つ目の「安全性・透明性」は、最初にお伝えした通り、メールアドレスからRampIDにするときは複雑な計算方法で生成されているのでセキュリティ面は安心できるという点です。また、ユーザーに対して許可を得たデータのみ使っているので透明性があるという点は大事ですよね。
2つ目の「拡張性」は、ここについては私が一番良いと思ったところなんですけど、RampIDを生成するためには「ATS」というモジュールを設置する必要があるのですが、「ATS」は他の確定IDにも対応しているそうなんです!
ヤマダさん)
ん?つまり、他の確定IDのソリューションは検討しなくてもよいということ?
タケダさん)
そうなんです。「ATS」を導入した場合、Unified ID 2.0やGoogleのPAIR IDなど、いくつかの確定IDのソリューションと連携できるので、一回導入すれば何社分も対応しなくてよさそうです。
ヤマダさん)
それはすごくありがたいねえ。
タケダさん)
最後に3つ目の「広告在庫の拡大」に関しては、こちらは言わずもがなですが、RampIDに対応することで、クッキーでターゲティングが難しいユーザーに対して配信が可能になります。下がっているうちのWebサイトの広告収益の一部も、取り戻せるかもしれません…!
今回のまとめ
ワタナベさん)
RampIDという確定IDが良さそうということはわかりましたが、もう少し勉強して整理が必要です。。
タケダさん)
いろいろと説明したけど、RampIDの概要についてはDACサイトの中に紹介されているページがあったから、後で読んでみてね!
あと、9/21(木)にDACとLiveRampで共催しているセミナーがあるみたい。登録して一緒に行ってみようか!実際に導入した企業の声も聞けるみたいだよ。
https://solutions.dac.co.jp/seminar/liveramp-230921
※本セミナーはお申込み受付を終了いたしました。
※セミナー内容にご関心をお寄せいただいた場合は、別途お問い合わせください。
ワタナベさん)
わかりました!ありがとうございます。
今日の日報をまとめたので確認お願いします!