昨今、インターネット上でのプライバシーの保護が重要視されており、それに応じてクッキーや広告IDのデータ取得・利用に関する規制が進んでいます。この規制により、1stパーティーデータや外部データの活用が一層注目されています。
本ブログでは、前・後編に分けて、クッキー規制時代におけるマーケティング課題と、それを解決する1stパーティーデータの活用方法に加え、新たなオーディエンスデータについて説明します。
本記事である「前編」ではクッキーや広告IDの規制による影響とその対応策として有用な1st パーティーデータの重要性について、「後編」では1stパーティーデータ活用において直面する課題と、その課題を解決する新たなオーディエンスデータについて解説します。
クッキーや広告IDの規制強化とデジタルマーケティングに与える影響
これまでのデジタルマーケティングでは、消費者のインターネット上の行動データを収集することで、広告のターゲティング配信や効果計測・データ分析が行われてきました。しかし昨今では、消費者の知らないところでデータが収集・活用されているという状態に対してユーザーが抱く"気持ち悪さ"を解消すべく、インターネット上のプライバシー保護が重要視され始めました。
こうした流れから、ユーザー識別子の利用を制限する技術的な規制と、個人データの取り扱いルールを厳格化する法的な規制(次章に記載)が行われています。
技術的な規制としては、Webブラウザによる3rdパーティークッキーの利用制限※や、iOSにおける広告IDの取得制限が進んでいます。また日本国内の法的な規制としては、個人情報保護法の改正に伴い、個人情報の収集・活用をする際にはユーザーからの同意を得ることが義務づけられました。
※Safariでは2021年5月時点で3rdパーティークッキーの利用を制限。Google Chromeでは2023年までに利用制限予定。
このように、3rdパーティークッキーや広告IDを収集・活用することは年々難しくなっています。そして、その影響はデジタルマーケティング、特に広告のターゲティングや効果計測などの領域に顕著に表れるようになりました。
ターゲティング領域
ターゲティング領域では、3rdパーティークッキーやiOSの広告IDであるIDFAに依存している行動ターゲティング・リターゲティング・アプリエンゲージメント広告などで影響が見られます。具体的には、従来に比べてターゲティング可能なIDが減ってしまうことから、ターゲティング広告のインプレッションが減少します。
効果計測領域
効果計測の領域においては、3rdパーティークッキーやIDFAに依存しているCV計測、ビュースルー計測、アプリインストール計測において影響が見られます。具体的には、計測可能な条件が減ることにより、コンバージョン数の総量が正しく測れなくなったり、条件別での効果比較ができなくなったりといったことが発生します。この点から、3rdパーティークッキー・広告IDに依存しないSNSに関する施策以外では、施策効果の計測が難しくなっていくことが今後の課題として挙げられます。
1stパーティーデータの重要性とその活用
クッキーや広告IDなどのオープンIDに対する規制は年々強化されており、今後もオープンIDへの制限が広がる可能性は高いと見られています。世界のブラウザ・OSのマーケットシェアを考慮すると、ブラウザでは約9割、OSに関してもiOSユーザーである6割近くと、規制対象となるボリュームがとても大きいことがわかります
このような潮流を鑑みて、3rdパーティークッキーや広告IDに依存せず、自社IDを使ったデータの活用がより重要視されており、とりわけ、1stパーティーデータを統合・分析することができるCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)が注目され、前述した課題の解決策として期待が寄せられています。
CDPは、自社IDおよび自社データの活用基盤を構築し、ユーザーの同意を得た情報の管理・統合することでオープンIDに対する技術的な規制への対応策として重要な役割を担います。
具体的には、CDPを利用することで顧客情報や広告施策の結果、CRM施策結果、オウンドデータなど様々なデータを自社IDベースで収集・管理できます。それらのデータを掛け合わせ、統合・分析を行っていくことで顧客の理解を深められるほか、1to1コミュニケーションへの活用も可能になります。
CDPの基本については過去記事「いまさら聞けない『CDP』とは?|その種類や活用方法まで詳しく解説!」にてご紹介しておりますので、ぜひご一読ください。
また、実際に1st パーティーデータを活用していくためには、法的な規制を正しく理解し、適切な対応策を整理することが必要不可欠となります。社内で利活用する情報が個人情報なのか/個人関連情報なのか、そしてその情報を第三者に提供するのか/しないのかによっても講じる対応が変わりますが、第三者提供を行う際には特に注意が必要です。
第三者提供を行わない場合は、個人情報・個人関連情報に関わらず、プライバシーポリシーを改定するだけで十分です。しかし第三者提供を行う場合、対象データが個人情報の場合には同意取得が必要となります。個人関連情報の場合であっても、提供先で個人データ化される際には同意取得が必要になります。
法規制による影響と、それに付随して必要となる対応の詳細につきましては、「改正個人情報保護法がデジタルマーケティングに与える影響とは?」の記事をご参考ください。
自社に当てはまるパターンを理解し、プライバシーポリシーの改定やCMPの導入などといった対応策を講じたうえで顧客のデータを適切に収集し、CDPを用いて統合することで、顧客起点でのデータの活用を行うことが可能となります。
まとめ
今回は技術的な規制と法的な規制、またその影響によるデジタルマーケティングの変化について解説しました。
技術的な規制によってオープンIDの利活用が制限され、従来のターゲティングや効果計測が難しくなるため、3rdパーティークッキーや広告IDに依存しない1st パーティーデータの活用がより重要となってきています。
ただし、1stパーティーデータを利用する際には、法的な規制によって厳格化された取り扱いルールを厳守する必要があります。自社内で扱うデータとその扱い方を整理し、適切な対応策を講じる必要があります。
そこで、自社IDおよび自社データの活用基盤を構築、およびユーザーの同意を得た情報の管理・統合が可能なCDPは、これからのデジタルマーケティングにおいて重要な役割を担います。CDPを中心に顧客の理解を深め、顧客に合わせた1to1コミュニケーションでマーケティング活動を高度化していくことが重要となります。
DACでは、CDPの構築やコンサルティング、データ戦略など、課題に合わせてさまざまなサービスを提供しています。CDPにご興味のある方や導入を検討している方は、お気軽にご相談ください。
後編では1stパーティーデータの利活用において直面する課題と、新たなオーディエンスデータの可能性について解説いたします。